「将来的には酒類の輸出だけでなく、国内での販売や輸入、卸売まで事業を広げたいのですが、最初からすべての免許を取得する必要がありますか?」
酒類販売業免許には、輸出、輸入、小売、通信販売、国内卸売など、販売方法や取扱酒類に応じてさまざまな種類があります。事業開始時に必要な免許を取得し、その後の事業拡大に合わせて条件緩和や新たな免許申請を行い、段階的に販売範囲を広げていくことも可能です。
今回ご紹介するのは、東京都江東区の会社様が、中国への清酒(日本酒)の輸出事業をきっかけに酒類販売を開始し、その後約10年間にわたり、国内小売、通信販売、国内卸売、輸入などへ事業を拡大してきた事例です。
代表者は利酒師の資格を持ち、日本各地の蔵元を訪問して日本酒を発掘するとともに、香港で試飲会を開催するなど、海外での日本酒普及活動にも取り組んでいました。初回申請では、こうした酒類に関する知識や海外での活動実績も、事業の具体性を説明する材料として活用しました。
その後、実際に酒類販売の実績を積みながら、自己商標酒類卸売業免許、洋酒卸売業免許、輸入酒類卸売業免許などを順次追加し、2022年には別の事業所で全酒類卸売業免許も取得しています。
この事例をもとに、酒類事業の成長に合わせて免許を段階的に拡充する方法や、既存免許の「条件緩和」、新たな販売場で免許を取得する場合の考え方についてご紹介します。
1. 事例の概要
今回ご依頼いただいたのは、東京都江東区の会社様です。
代表者は利酒師の資格を持ち、日本酒の海外普及活動にも取り組んでおり、当初は中国への清酒(日本酒)輸出事業を開始するために酒類販売業免許を申請しました。
その後、事業の成長に合わせて免許を段階的に追加し、輸出だけでなく、国内小売・通信販売・国内卸売・輸入まで酒類事業の範囲を広げています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者所在地 | 東京都江東区 |
| 事業の起点 | 中国への清酒(日本酒)輸出事業 |
| 初回に取得した免許 | 輸出酒類卸売業免許・一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許 |
| 初回申請日 | 2013年11月11日 |
| 初回免許交付日 | 2014年1月22日 |
| その後追加した免許 | 自己商標酒類卸売業免許・店頭販売酒類卸売業免許・洋酒卸売業免許・輸入酒類卸売業免許・全酒類卸売業免許 |
| 免許拡充期間 | 2014年~2022年(約9年間) |
| 依頼者の特徴 | 代表者が利酒師資格を保有し、海外での日本酒普及活動の実績あり |
| この事例の特徴 | 事業の成長に合わせて条件緩和・追加申請を行い、酒類事業の範囲を段階的に拡大 |
2. 事業拡大に伴う免許取得の経緯
| 時期 | 取得した免許 |
|---|---|
| 2013年11月11日 申請 2014年1月22日 交付 |
輸出酒類卸売業免許・一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許(3種同時取得) |
| 2015年 | 自己商標酒類卸売業免許(条件緩和申出により追加) |
| 2018年 | 店頭販売酒類卸売業免許・洋酒卸売業免許(2種同時取得) |
| 2022年 | 輸入酒類卸売業免許(既存事業所にて追加取得) |
| 2022年 | 全酒類卸売業免許(別の事業所を販売場として新規取得) |
3. 依頼者の状況:利酒師資格を持ち、日本酒の海外普及活動に取り組む代表
依頼者の代表は利酒師の資格を保有しており、日本各地の蔵元を訪ね歩いて優れた日本酒を発掘する活動を続けてきた方です。香港での日本酒試飲会の開催など、海外での日本酒普及活動にも精力的に取り組んできた実績があります。こうした活動を事業として発展させ、中国市場への清酒輸出を本格的に展開するために免許申請を依頼されました。
4. この事例のポイント①:利酒師資格・日本酒普及活動の実績を申請書類に活用
輸出酒類卸売業免許の取得には、申請者が酒類の卸売業を適正に経営できる知識・経験・能力を有していることが審査されます。利酒師資格は酒類販売業免許の法定要件ではありませんが、申請者が酒類に関する専門的な知識・鑑定能力を持つことを示す根拠として申請書類に記載しました。
また、香港での試飲会開催など海外での日本酒普及活動の実績は、輸出先市場での活動実績・販売ネットワークの具体性を示す材料として機能します。酒類業界での直接的な販売経験が少ない場合でも、こうした活動実績や専門資格が審査において申請者の能力・経験を補う要素となり得ます。
5. この事例のポイント②:事業拡大に合わせて段階的に免許を追加取得
初回は輸出・小売・通販の3免許を同時取得してスタートし、その後の事業展開に合わせて免許を順次追加していきました。
2015年に取得した自己商標酒類卸売業免許は、初回申請時には経験要件等の関係で取得できなかった可能性がありますが、事業実績を積んだうえで条件緩和の申出という手続きにより追加取得しています。条件緩和申出とは、既存の免許に新たな免許種別を追加したり、取り扱い品目の制限を外したりするための手続きで、免許取得後に事業を拡大する際に活用できます。
2018年には店頭販売酒類卸売業免許と洋酒卸売業免許を追加し、国内の酒類販売業者への卸売体制も整備。2022年には輸入酒類卸売業免許を取得して輸入販売にも対応し、同年別の事業所では全酒類卸売業免許も取得しています。
6. この事例のポイント③:全酒類卸売業免許は別事業所で取得
2022年に取得した全酒類卸売業免許は、既存の事業所ではなく別の事業所を販売場として申請・取得しています。酒類販売業免許は販売場ごとに取得するものであり、事業拡大に伴い新たな拠点を設けた場合は、その拠点ごとに改めて免許申請が必要です。
全酒類卸売業免許は東京など主要地域では免許可能件数の制限があり、申請者が枠を超えた場合は公開抽選となります。別事業所での取得ということは、その事業所の管轄税務署において申請・審査が行われた形です。
7. よくある質問
Q. 利酒師などの民間資格は、免許審査でどの程度評価されますか?
法定要件ではないため、資格の有無だけで審査結果が決まるわけではありません。ただし、本事例のように、酒類に関する知識・能力を示す根拠資料の一つとして申請書類に記載することで、経験年数等の要件を補足する材料になり得ます。
Q. 免許は一度にすべて取得したほうがよいですか、それとも段階的に増やしていくのがよいですか?
事業計画によります。本事例のように、まず必要な免許でスタートし、事業の実績を積みながら条件緩和申出で範囲を広げていく方法は、初期の申請要件を満たしやすいというメリットがあります。将来的な事業拡大の見通しがある場合は、最初の相談時にあわせてご相談ください。
Q. 事業所を増やした場合、既存の免許はそのまま新事業所でも使えますか?
使えません。酒類販売業免許は販売場ごとに取得するものです。新たな事業所を設けて酒類を取り扱う場合は、その事業所を管轄する税務署に改めて免許を申請する必要があります。
Q. 全酒類卸売業免許の抽選に外れた場合、他の卸売免許で代替できますか?
取り扱う品目によっては代替できる場合があります。たとえば洋酒中心であれば洋酒卸売業免許、自社輸入品であれば輸入酒類卸売業免許など、事業内容に応じた免許区分をご案内できます。本事例のように、複数の卸売免許を組み合わせて事業範囲をカバーする方法もあります。
まとめ
- 2013年の初回申請(輸出・小売・通販の3免許同時取得)を起点に、約10年で計8種類の免許を段階的に取得
- 利酒師資格・海外普及活動の実績は法定要件ではないが、申請者の知識・能力・事業具体性を示す根拠として申請書類に活用できる
- 初回取得後に事業実績を積み、条件緩和申出により自己商標卸売業免許を追加取得
- 事業拡大に伴い新たな事業所を設けた場合は、その販売場ごとに改めて免許申請が必要
日本酒・国産酒類の輸出事業の立ち上げ、段階的な免許拡充・条件緩和申出についてご相談がある方は、お気軽にお問い合わせください。










