酒類卸売業免許は経験なしでも取得できるか|令和3年の審査基準改訂を解説
「酒類の卸売を始めたいが、これまでお酒の仕事をしたことがない。免許は取れるのか?」——このようなご相談をよくいただきます。
結論からいうと、免許の種類によっては、酒類業界の経験がなくても取得できる可能性があります。令和3年7月に国税庁が「酒類卸売業免許の申請等の手引き」を改訂し、一部の卸売免許について審査基準が明確化されました。
改訂前の状況:卸売免許は経験重視だった
酒類販売業免許の審査では、申請者に「酒類の販売業務に関する経験」または「酒類の卸売業に関する経営経験」があることが重視されます。特に卸売業免許は小売業免許よりも経験要件が厳格に運用される傾向がありました。
改訂前は、一般酒類小売業免許については「他業種での経営経験+酒類販売管理研修の受講」で経験不足を補えると手引きに明記されていましたが、卸売業免許にはその旨の記載がなく、経験のない方は取得が難しい状況でした。
令和3年7月の改訂:卸売免許にも柔軟な審査基準が明記された
令和3年7月の改訂により、以下の4種類の卸売免許について、経験がない場合の審査基準が手引きに追記されました。
- 洋酒卸売業免許
- 店頭販売酒類卸売業免許
- 協同組合員間酒類卸売業免許
- 自己商標酒類卸売業免許
追記された内容は以下のとおりです。
※なお、これらの従事経験や経営経験がない場合には、その他の業での経営経験に加え「酒類販売管理研修」の受講の有無等から、
① 酒類の特性に応じた商品管理上の知識及び経験
② 酒税法上の記帳義務を含む各種義務を適正に履行する知識及び能力
など、酒類の卸売業を経営するに十分な知識・能力が備わっているかどうかを実質的に審査することになります。
つまり、酒類業界の経験がなくても、①他業種での経営経験、②酒類販売管理研修の受講という2つの要素を組み合わせることで、卸売業を適正に営む能力があると判断してもらえる道が正式に開かれました。
実務上の影響が大きい:洋酒卸売業免許
今回の改訂で特に影響が大きいのは洋酒卸売業免許です。ワイン・ウイスキー・スピリッツなど洋酒全般を卸売できるこの免許は、輸入ビジネスや飲食業界との取引を始めたい方から需要が高い免許です。
これまで「酒類の卸売経験がないから難しい」と諦めていた方でも、以下のような方であれば取得できる可能性が十分あります。
- 飲食店・飲食関連の輸入業など、食品や飲料に関連する業種での経営・管理経験がある方
- 商社・貿易業など、仕入れ・販売の実務経験がある方
- 物販・EC事業など、在庫管理・取引先管理の経験がある方
酒類販売管理研修とは
酒類販売管理研修は、都道府県の小売酒販組合などが実施している研修で、酒類の販売に関する法令知識(酒税法・未成年者飲酒禁止法など)や適正な販売管理の方法を学ぶものです。
数時間程度の受講で修了証が発行されます。申請前に受講しておくことで、審査において「酒類販売に関する知識を自発的に取得しようとしている」という姿勢を示すことができます。
なお、研修の受講だけで免許が取得できるわけではなく、あくまでも他業種での経営経験などと組み合わせて総合的に審査されます。
経験不足を補うために申請で整理しておくべきこと
酒類業界の経験がない状態で卸売業免許を申請する場合、以下の点を具体的に整理して申請書類に反映させることが重要です。
- これまでの経営・管理経験の内容:何の業種で、どのような立場で、どの程度の規模の事業を経営・管理してきたか
- 仕入先・販売先の確保状況:取引承諾書など、具体的な取引関係が成立していることを示す書類
- 収支計画の根拠:売上・仕入れ・経費の見込みについて、裏付けのある数字で説明できること
- 酒類販売管理研修の受講:申請前に受講し、修了証を取得しておくこと
まとめ
- 令和3年7月の手引き改訂により、洋酒卸売業免許など4種類の卸売免許で「経験なし」の場合の審査基準が明文化された
- 他業種での経営経験+酒類販売管理研修の受講を組み合わせることで、酒類業界未経験でも審査を通過できる可能性がある
- ただし、仕入先・販売先の確保と具体的な事業計画の準備は引き続き必要
酒類卸売業免許の取得をご検討の方、経験要件について不安がある方は、お気軽にご相談ください。










