台湾産のフルーツリキュールを日本で販売し、カクテルイベントや販促活動を通じてブランドを広げていくためには、予定する販売先や販売方法に応じた酒類販売業免許が必要です。
今回は、IT業界でインフラエンジニアとして勤務する方から、新会社を設立して台湾産フルーツリキュールの販売事業を始めたいとのご相談をいただき、会社設立から酒類販売業免許の取得までお手伝いしました。
会社設立前の段階からご相談をいただき、販売場として利用できるレンタルオフィス探しもサポートしました。会社設立後は、輸出酒類卸売業免許・輸入酒類卸売業免許・一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許の4種類を同時に申請しました。
審査では、レンタルオフィスの賃貸借契約に小売業を制限する条項があったことから、賃貸人の承諾書を追加提出しました。また、新設法人の銀行口座開設に時間を要したため、口座開設を待ちながら審査を進めることとなりました。
会社設立・販売場の確保から酒類販売業免許の取得まで、一連の手続きをサポートした事例としてご紹介します。
1. 事例の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 新設法人 |
| 代表者等の経歴 | IT業界(インフラエンジニア)、唎酒師資格あり |
| 事業内容 | 台湾産フルーツリキュールの販売、カクテルイベントの企画・運営、販促活動など |
| 販売場 | レンタルオフィス |
| 取得した免許 | 輸出酒類卸売業免許・輸入酒類卸売業免許・一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許 |
| ご相談日 | 2025年1月17日 |
| 会社設立日 | 2025年5月7日 |
| 申請日 | 2025年6月26日 |
| 免許日 | 2025年9月1日 |
| 主なポイント | 会社設立前からサポート、レンタルオフィスの選定、賃貸人の承諾書、銀行口座開設への対応 |
2. ご相談の経緯
2025年1月、台湾産のフルーツリキュールを日本で販売する事業を始めたいとのご相談をいただきました。
計画していたのは、単に商品を販売するだけではなく、台湾産フルーツリキュールを使用したカクテルイベントの企画・運営や販促活動などを通じて、日本国内でブランドの認知度を高めていく事業です。
当初の流通モデルでは、台湾から日本への輸入そのものは既存の輸入業者が行い、新設する会社が国内で商品を仕入れて販売する形を予定していました。
一方、事業が軌道に乗った後は、台湾のメーカー等から自社で直接輸入することも視野に入れていました。
申請者様の本業はIT業界のインフラエンジニアで、酒類販売業の経験はありませんでしたが、お酒への関心が高く、唎酒師の資格も取得されていました。日本酒をさらに広めるとともに、台湾と日本の架け橋となる事業を行いたいという構想をお持ちでした。
そこで当事務所では、酒類販売業免許だけでなく、会社設立前の段階から事業計画や販売方法を確認し、新会社の設立、販売場となるレンタルオフィス探しも含めてサポートすることになりました。
3. この事例のポイント
今回の案件では、会社設立前から酒類事業の内容を整理し、販売場の確保、4種類の酒類販売業免許の申請、賃貸借契約上の問題、銀行口座開設など、新設法人ならではの複数の課題に対応しました。
① 会社設立前から酒販免許取得を見据えてサポート
今回のご相談は、まだ会社を設立する前の2025年1月にいただきました。
酒類販売業免許を取得するためには、会社を設立するだけでなく、販売場、仕入先、販売先、販売方法などについても具体的にしていく必要があります。
そこで、予定している台湾産リキュールの流通方法や今後の事業展開を確認しながら、会社設立後に酒類販売業免許を申請できるよう準備を進めました。
2025年5月7日に会社を設立し、その後、法人名義で酒類販売業免許の申請を行いました。
役員のうち1名は台湾在住でしたが、会社の役員構成や予定している事業内容を整理したうえで、新設法人として申請を進めています。
② 酒販免許を申請できるレンタルオフィス探しからサポート
新会社の販売場については、レンタルオフィスを利用する計画でした。
レンタルオフィスであれば、どの物件でも酒類販売業免許を申請できるわけではありません。実際の使用スペースや契約内容、事業利用の可否などを確認し、酒類販売を行う販売場として使用できる物件を選ぶ必要があります。
今回も、会社設立前からレンタルオフィス探しをお手伝いし、酒類販売業免許の申請を前提として物件を検討しました。
最終的に契約したレンタルオフィスを販売場として、4種類の酒類販売業免許を申請しました。
③ 4種類の酒類販売業免許を同時に申請
今回の事業では、国内での商品販売だけでなく、将来的な輸出入を含めた事業展開を予定していたことから、次の4種類の酒類販売業免許を同時に申請しました。
- 輸出酒類卸売業免許
- 輸入酒類卸売業免許
- 一般酒類小売業免許
- 通信販売酒類小売業免許
一般酒類小売業免許は国内での店頭・対面販売など、通信販売酒類小売業免許はインターネット等による一般消費者への販売に対応します。
また、輸入酒類卸売業免許を取得することで、将来自社で台湾から酒類を直接輸入し、国内の酒類販売業者等へ卸売する事業にも対応できる体制を整えました。
本件では、予定している事業内容を整理したうえで、4種類を同時に申請し、最終的にすべての免許が交付されました。
④ レンタルオフィスの契約書に「小売業」の制限があり承諾書を提出
2025年6月26日に申請した後、7月3日に税務署から追加書類について連絡がありました。
問題となったのは、レンタルオフィスの賃貸借契約書に記載されていた禁止行為です。
契約書には、禁止行為の一つとして、
「小売業や医療業など第三者の頻繁な出入りを伴う可能性のある事業を行うこと」
という趣旨の記載がありました。
今回申請している免許には一般酒類小売業免許が含まれているため、この契約条項との関係について税務署から確認があり、賃貸人が酒類販売を行うことを認めていることが分かる承諾書を提出するよう指示を受けました。
そこで賃貸人へ今回の事業内容を説明し、酒類販売を行うことについての承諾書を取得し、2025年7月18日に税務署へ提出しました。
レンタルオフィスや賃貸事務所で酒類販売業免許を申請する場合には、物件を借りることができるというだけでなく、予定している酒類販売事業が契約上認められているかを確認することが重要です。
⑤ 新設法人の銀行口座開設に時間を要した
今回の手続きでは、新設法人の銀行口座開設にも時間を要しました。
会社設立後に銀行口座の開設手続きを進めていましたが、なかなか口座が開設されず、酒類販売業免許の審査と並行して銀行側の手続きを待つ状態が続きました。
2025年8月20日には税務署から、銀行口座の情報が提出されれば決裁に回せる状態まで審査が進んでいるとの連絡がありました。
その後、必要な口座情報を整え、2025年9月1日に4種類の酒類販売業免許が交付されました。
新設法人の場合には、会社設立、事務所の契約、銀行口座の開設、酒類販売業免許の申請など、複数の手続きを並行して進めることがあります。
今回の事例では、酒販免許の審査そのものだけでなく、会社設立後の銀行口座開設も全体のスケジュールに影響したケースとなりました。
4. 申請から免許取得までの流れ
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2025年1月17日 | 酒類販売事業についてお問い合わせ |
| 2025年1月以降 | 会社設立・事業計画・レンタルオフィス選定をサポート |
| 2025年5月7日 | 会社設立 |
| 2025年6月26日 | 4種類の酒類販売業免許を申請 |
| 2025年7月3日 | 税務署から賃貸借契約について追加書類の指示 |
| 2025年7月18日 | 賃貸人から取得した承諾書を提出 |
| 2025年8月20日 | 税務署から銀行口座情報が提出されれば決裁可能な状態との連絡 |
| 2025年9月1日 | 4種類の酒類販売業免許を取得 |
会社設立前のご相談から約7か月半、酒類販売業免許の申請からは約2か月で免許取得となりました。
5. よくある質問
Q. 酒類販売業の経験がなくても酒販免許を申請できますか?
酒類販売業の経験がないことだけで、直ちに免許を取得できないわけではありません。
申請では、代表者等のこれまでの経歴に加え、仕入先、販売先、販売方法、事業計画などを整理して審査を受けます。
今回の申請者様はIT業界のインフラエンジニアで、酒類販売業の経験はありませんでしたが、唎酒師の資格を取得するなど酒類に関する知識を持ち、具体的な事業計画を立てて新会社を設立しました。
Q. 新設法人でも酒類販売業免許を取得できますか?
新設法人であることだけを理由に申請できないわけではありません。
今回も2025年5月に会社を設立し、翌月の6月に4種類の酒類販売業免許を申請しています。
新設法人の場合には会社としての過去の実績がないため、代表者等の経歴や具体的な仕入・販売計画などを整理して申請することが重要です。
Q. レンタルオフィスでも酒類販売業免許を取得できますか?
レンタルオフィスであることだけを理由に、酒類販売業免許を取得できないわけではありません。
ただし、実際の使用スペース、契約内容、他の利用者との関係、酒類販売を行うことが認められているかなどを確認する必要があります。
今回もレンタルオフィスを販売場として申請しましたが、賃貸借契約書に小売業を制限する条項があったため、税務署からの指示により賃貸人の承諾書を追加提出しました。
Q. 賃貸借契約書で小売業が禁止されている場合は申請できませんか?
契約内容を確認する必要があります。
今回の事例では、契約書に第三者の頻繁な出入りを伴う小売業などを制限する記載がありましたが、賃貸人から今回の酒類販売を承諾する旨の書面を取得して税務署へ提出しました。
承諾書、覚書、契約変更書など名称にかかわらず、予定している酒類販売について賃貸人との合意を確認できる書面を求められる場合があります。
Q. 最初は国内の輸入業者から仕入れ、後から自社輸入することはできますか?
可能です。
今回も、事業開始時は既存の輸入業者が台湾から輸入した商品を国内で仕入れて販売し、将来的には自社で直接輸入することを検討していました。
自社で輸入した酒類を国内の酒類販売業者等へ卸売する場合には、輸入酒類卸売業免許が必要となります。
今回の事例では、将来の事業展開も踏まえて輸入酒類卸売業免許を取得しています。
Q. 法人の銀行口座がまだ開設されていなくても申請できますか?
本件では、銀行口座の開設手続き中に酒類販売業免許を申請し、審査を進めました。
ただし、審査の最終段階では銀行口座情報について確認を求められ、2025年8月20日に税務署から、口座情報が提出されれば決裁に回せる状態との連絡を受けています。
新設法人では口座開設に時間がかかることもあるため、会社設立後できるだけ早めに銀行口座の開設手続きを進めておくことをおすすめします。
6. まとめ
今回の事例では、台湾産フルーツリキュールを中心とした酒類事業を立ち上げるため、会社設立前の段階からご相談をいただきました。
当事務所では、事業計画の整理、会社設立、酒販免許を申請できるレンタルオフィス探しからサポートし、新設法人設立後に、輸出酒類卸売業免許・輸入酒類卸売業免許・一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許の4種類を申請しました。
審査では、レンタルオフィスの契約書に記載された小売業の制限について賃貸人の承諾書を追加提出したほか、新設法人の銀行口座開設にも時間を要しました。
それぞれの確認事項に対応し、2025年9月1日に4種類すべての酒類販売業免許を取得することができました。
新しく会社を設立して酒類事業を始める場合には、会社設立だけでなく、販売場の選定、賃貸借契約、銀行口座、仕入先・販売先、将来の販売方法まで含めて、酒販免許の取得を見据えて準備することが重要です。










