自社で企画したオリジナル酒類をOEM製造し、全国の酒販店への卸売と一般消費者への販売を行う場合には、販売方法に応じて複数の酒類販売業免許が必要になることがあります。
今回は、山口県で設立された飲料企画会社様からご依頼をいただき、OEM製造したクラフトジン・クラフトビール(IPA)・ローアルコール飲料を販売するため、自己商標酒類卸売業免許・一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許の3種類を同時に申請しました。
代表者様は2006年から飲食店を経営しており、その経験をもとに「飲食店で会話のきっかけになる商品」をコンセプトとして、季節限定のクラフトジンやIPAなどの商品開発を進めていました。
審査では、複数のOEM委託先との契約関係や、自己商標を開発した経緯について追加確認があり、資料を整理して対応しました。
新設法人がOEMによるオリジナル酒類を企画し、卸売・小売・通信販売まで展開するために3種類の免許を取得した事例としてご紹介します。
1. 事例の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者所在地 | 山口県 |
| 依頼者の状況 | 2021年設立の飲料企画会社(代表は2006年から飲食店を経営) |
| 取得免許 | 自己商標酒類卸売業免許・一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許 |
| 販売する酒類 | OEM製造のクラフトジン・クラフトビール(IPA)・ローアルコール飲料 |
| お問い合わせ日 | 2022年1月11日 |
| ご依頼日 | 2022年1月17日 |
| 申請日 | 2022年5月9日 |
| 免許交付日 | 2022年9月9日 |
| 申請から交付まで | 約4ヶ月 |
2. ご相談の経緯
ご依頼者様は2021年に設立されたばかりの会社で、酒類をはじめとする飲料の企画を主たる事業とされています。OEMにより、クラフトビール、クラフトジン、ローアルコール飲料の製造を進めており、完成した商品を全国の酒店へ卸売販売するとともに、自社WEBサイトを通じて個人のお客様への通信販売を行うことを計画されていました。
申請時点で、複数の製造会社との業務提携を締結済みで、WEBサイトについても商品が出来次第すぐに運用可能な状態に整備されており、事業開始に向けた体制が着実に構築されていました。
3. 商品企画の独自性 ― 飲食店経営の経験から生まれた発想
ご依頼者様の代表者様は、2006年から飲食店を経営されてきたご経験をお持ちです。長年の経営を通じて、お客様が酒類を提供する飲食店に対して、単に飲食を楽しむだけでなく「会話を楽しみ、人間関係を深める場」としての機能も求めていることを強く実感されたといいます。
そのご経験から生まれたのが、「飲食店様にとってお客様との話の種になる飲料を提供する」という商品コンセプトです。具体的には、以下の3カテゴリーの商品開発を進めておられます。
クラフトジン ― 春夏秋冬の限定フレーバー
地域性や季節ごとのフレーバーによって個性を出しやすいクラフトジンの特性を活かし、春夏秋冬それぞれのフレーバーを限定販売する企画を予定されています。お客様には、その味わいとフレーバーに関する感想や会話を楽しみに、何度も飲食店へ足を運んでいただけるような商品を提案するという狙いです。
クラフトビール ― IPA特化
クラフトビールについては、IPA(インディア・ペールエール)に特化した商品企画を進めておられます。ビールにこだわる方向けに、ホップの香りを存分に味わっていただける商品をコンセプトとしています。
ローアルコール飲料 ― 商品単体でも割り材としても使える汎用性
商品単体でも飲料として提供でき、かつ割り材としても使用できる汎用性の高いローアルコール飲料についても、現在製作を進めているところです。
4. この事例のポイント
今回の申請では、OEMで製造するオリジナル酒類の販売方法に応じた免許の組み合わせと、OEM委託先との契約関係、自己商標酒類としての事業内容の説明が主なポイントとなりました。
① 3種類の免許を同時に申請
今回の事業では、自社で企画したクラフトジン・クラフトビール(IPA)・ローアルコール飲料をOEM製造し、酒販店等への卸売だけでなく、一般消費者への販売やインターネット販売も予定していました。
そのため、事業内容に応じて、
- 自己商標の酒類を酒類販売業者などへ卸売するための「自己商標酒類卸売業免許」
- 一般消費者への店頭・対面販売などに対応する「一般酒類小売業免許」
- インターネット等を利用して広い地域の一般消費者へ販売するための「通信販売酒類小売業免許」
の3種類を同時に申請しました。
同じOEM商品を販売する場合でも、「誰に」「どのような方法で」販売するのかによって必要となる免許は異なります。
本件では、開業当初から卸売・小売・通信販売の複数の販売チャネルを予定していたため、事業全体の商流を整理したうえで、必要となる3種類の免許を申請しました。
② OEM委託先との契約関係について追加資料を提出
今回の商品は自社で製造するのではなく、複数の酒類製造者へOEM製造を委託する計画でした。
申請後、税務署からOEM委託先との契約関係について追加確認があり、当初提出していた資料に加えて、他の製造委託先との契約内容が分かる書類の提出を求められました。
そこで、各OEM委託先との契約書類を整理し、どの事業者に、どの酒類の製造を委託する予定なのかが分かる形で追加資料を提出しました。
なお、自己商標酒類卸売業免許の申請において、複数のOEM委託先が必須という意味ではありません。
本件では複数の製造委託先を予定していたため、その契約関係について税務署から確認があり、関係資料を提出して対応したものです。
③ 自己商標を開発した経緯を税務署へ説明
審査の過程では、今回販売する酒類がどのような経緯で企画・開発された商品なのかについても確認がありました。
申請者様は、長年にわたり飲食店を経営してきた経験をもとに、「飲食店で会話のきっかけになる商品」をコンセプトとして、クラフトジンやIPAなどのオリジナル商品の企画を進めていました。
そこで、代表者様のこれまでの事業経験や商品開発の経緯、OEM製造を開始するまでの流れなどを整理し、税務署へ説明しました。
自己商標酒類卸売業免許では、単に製造者から酒類を仕入れて販売するのではなく、申請者自身が企画した自己商標の商品をどのように事業として展開するのかを説明する場面があります。
本件では、商品開発の背景や製造委託の内容について追加説明を行い、最終的に自己商標酒類卸売業免許を含む3種類の免許が交付されました。
審査には一定の期間を要し、申請から免許取得までは結果として約4か月となりました。審査期間は申請内容や追加確認の有無によって異なるため、同様の案件でも必ず同程度の期間になるとは限りません。
5. よくある質問
Q. 自己商標酒類卸売業免許は、他の卸売免許と同じように抽選になりますか?
なりません。ビール卸売業免許や全酒類卸売業免許のような免許可能件数による抽選はありません。ただし、自社で開発した商標であることや、事業計画の実体性について、書面での丁寧な説明が求められます。
Q. OEM委託先が1社しかない場合、自己商標酒類卸売業免許は取得できませんか?
取得できる可能性はありますが、本事例のように、他の委託先との契約状況について確認を求められることがあります。特定の委託先に集中する合理的な理由を説明できるようにしておくことをおすすめします。
Q. 自己商標の開発経緯は、どの程度詳しく説明する必要がありますか?
商品企画に至った背景、商標の開発プロセス、商品コンセプトなどを書面で具体的に説明することが求められます。本事例のように、代表者の実務経験(飲食店経営)に基づく発想を整理して伝えることが、審査上の説得力につながります。
Q. 新設法人でも自己商標酒類卸売業免許・一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許を同時に取得できますか?
取得できます。本事例のように、事業計画(OEM委託先との提携状況、販売体制の整備状況等)が具体的であれば、新設法人でも複数免許の同時取得が可能です。
まとめ
新設法人による自己商標卸売業免許の取得、しかも一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許との3免許同時申請は、必要書類が多岐にわたり、各免許ごとに審査ポイントも異なる難易度の高い案件です。
本件では、ご依頼者様が飲食店経営のご経験を踏まえた明確な商品コンセプトをお持ちであったこと、複数の製造会社との業務提携を計画的に進められていたこと、そしてWEBサイトを含む販売体制を整備されていたことが、スムーズな免許取得につながった大きな要因でした。
当事務所では、これまで2,000件を超える酒類販売業免許申請のサポート実績がございます。新規事業として酒類販売を始められる事業者様、特に自己商標商品の卸売・小売・通信販売を組み合わせた事業展開をご検討中の事業者様は、ぜひ一度当事務所までお問合せください。










