日本国内で仕入れたお酒を海外の事業者へ継続的に販売する場合には、輸出酒類卸売業免許が必要です。
今回は、東京都内の事業者様からご依頼をいただき、日本酒や洋酒など幅広い酒類を海外のバイヤー・輸入業者へ販売するため、輸出酒類卸売業免許の取得をお手伝いしました。
本件では、特定の品目に限定せず、全酒類を対象とする形で申請し、2021年9月14日の申請から約28日後の10月12日に免許が交付されました。
その後も、2022年には奈良県で酒類蔵置場設置許可を取得し、2024年には条件緩和により国内一般小売を追加するなど、事業の拡大に合わせて必要な手続きを段階的に進めています。
輸出酒類卸売業免許の取得から、その後の事業展開までを継続してサポートした事例としてご紹介します。
1. 事例の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者所在地 | 東京都 |
| 取得免許 | 輸出酒類卸売業免許(全酒類) |
| 販売する酒類 | 日本酒・洋酒(清酒・果実酒・ウイスキー・リキュール・ビール・スピリッツ等) |
| 申請日 | 2021年9月14日 |
| 免許交付日 | 2021年10月12日 |
| 申請から交付まで | 約28日 |
| その後の展開 | 2022年:奈良県の倉庫で酒類蔵置場設置許可通知書を取得/2024年:条件緩和により国内一般小売を追加 |
2. ご相談の経緯
依頼者は東京都内に拠点を置く事業者で、日本酒や洋酒を海外のバイヤーや輸入業者に販売する輸出事業への参入を検討していました。酒類を輸出目的で卸売する事業を業として行うには、酒税法に基づく輸出酒類卸売業免許が必要です。当事務所に免許取得の申請代行をご依頼いただきました。
3. この事例のポイント
今回の申請では、主に次の3点がポイントとなりました。
①:全酒類を対象とする輸出酒類卸売業免許を取得
今回の申請では、日本酒、焼酎、ワイン、ウイスキーなど、特定の品目に限定せず、幅広い酒類を海外へ販売できる内容で輸出酒類卸売業免許を申請しました。
輸出酒類卸売業免許は、国内の酒類販売業者などから仕入れた酒類を海外へ輸出販売するための免許です。
全酒類卸売業免許やビール卸売業免許のような免許可能件数による調整の対象ではないため、申請時期に応じて通常の審査を受けることになります。
本件では、2021年9月14日に申請し、同年10月12日に免許が交付されました。
申請から交付まで約28日という結果になりましたが、審査期間は申請内容や追加確認の有無などによって異なるため、すべての案件で同程度の期間で取得できるわけではありません。
②:奈良県に酒類蔵置場を設置
輸出酒類卸売業免許の取得後、事業の拡大に伴い、2022年には奈良県に輸出用酒類を保管するための「酒類蔵置場」を設置しました。
酒類蔵置場は、単なる販売用酒類の保管倉庫である「蔵置所」とは異なり、酒税法上の許可を受けて、製造場から未納税で移出された酒類を受け入れ、保管するための場所です。
通常、酒類は製造場から移出される際に酒税が課税されますが、一定の要件のもとで酒類蔵置場へ未納税で移出することができます。輸出を予定している酒類についても、蔵置場を活用することで、輸出までの間、未納税の状態で保管することが可能です。
今回の事例では、奈良県内に保管拠点を設けるにあたり、酒類蔵置場設置許可申請を行いました。
申請では、蔵置設備の状況や保管方法に加え、未納税移出を予定している酒類製造者、未納税移入の見込数量などを記載した事業もくろみ書を提出しました。
その後、税務署の審査を経て酒類蔵置場の設置許可を取得し、輸出用酒類を未納税で受け入れ、保管できる体制を整えました。
酒類の輸出量が増えてくると、販売場とは別に一定量の商品を保管する物流拠点が必要になることがあります。そのような場合、単なる「蔵置所」とするのか、未納税酒類を取り扱う「酒類蔵置場」とするのかによって、必要な手続きが大きく異なります。
③:本件では書面を中心に審査が進行
今回の輸出酒類卸売業免許の申請では、申請書類の提出後、税務署による現地確認は行われず、書面を中心に審査が進みました。
申請前には、仕入先、海外の販売先、取扱予定の酒類、販売方法などを整理し、事業内容が分かるように必要資料を準備しました。
その後、大きな補正を要することなく審査が進み、申請から約28日で免許が交付されています。
ただし、酒類販売業免許の審査方法は案件ごとに異なります。申請内容によっては、追加資料の提出や販売場の状況確認などが行われることもあります。
そのため、「輸出酒類卸売業免許は現地確認がない」と一律に考えるのではなく、求められた確認事項に対応できるよう準備しておくことが大切です。
4. 2024年には一般酒類小売業免許を追加
その後、事業者様から国内でも酒類を販売したいとのご相談があり、2024年には既存の免許について条件緩和の手続きを行い、一般酒類小売業免許を追加しました。
輸出酒類卸売業免許を持っていても、国内の一般消費者や飲食店へ酒類を販売できるわけではありません。
国内で店頭販売や対面販売を行う場合には、一般酒類小売業免許など、販売方法に対応した免許が別途必要となります。
今回のように、事業開始時は海外向け輸出のみでスタートし、その後の事業拡大に合わせて国内販売を追加することも可能です。
最初から必要以上に多くの免許を取得するのではなく、実際の事業計画に合わせて段階的に免許の範囲を広げていく方法もあります。
5. よくある質問
Q. 輸出酒類卸売業免許があれば、すべての酒類を輸出できますか?
免許に付されている条件によります。
本件では特定の品目に限定されず、全酒類を対象とする内容で免許が交付されました。
一方、申請内容によっては取扱酒類について条件が付される場合もあるため、実際に交付された免許通知書の条件を確認することが重要です。
Q. 輸出酒類卸売業免許で国内の飲食店へ販売できますか?
できません。
輸出酒類卸売業免許は、酒類を海外へ輸出販売するための免許です。
国内の飲食店や一般消費者へ酒類を販売する場合には、一般酒類小売業免許など、国内での販売方法に対応した免許が必要となります。
本件でも、国内販売を開始する際には、後から一般酒類小売業免許を追加しています。
Q. 免許を取得した販売場とは別の倉庫に酒類を保管できますか?
別の場所に販売用酒類を継続的に保管する場合には、その場所や保管方法に応じて酒類蔵置場に関する手続きが必要となることがあります。
本件では、事業拡大に伴い奈良県内に保管場所を設け、酒類蔵置場として手続きを行いました。
倉庫を借りる前に、予定している保管方法について管轄税務署へ確認しておくことをおすすめします。
Q. 酒類蔵置場を設ければ、必ず未納税の酒類を保管できますか?
はい。酒類蔵置場の設置許可を受けた場所では、酒税が課税される前の酒類を未納税で移入し、保管することができます。
酒類製造者の製造場から酒類蔵置場へ未納税で移出する場合には、酒税法上の所定の手続きを行い、蔵置場側でも未納税移入酒類として適切に管理する必要があります。
酒類蔵置場設置許可の申請では、未納税移出を予定している酒類製造者、蔵置場での管理方法、未納税移入の見込数量などを記載した事業もくろみ書を提出します。
Q. 輸出免許を取得した後に国内販売を追加できますか?
可能です。
既存の免許に条件を追加・変更するための手続きを行い、要件を満たせば国内販売に対応する免許を追加できる場合があります。
本件では、輸出酒類卸売業免許を取得した後、2024年に一般酒類小売業免許を追加しました。
まとめ
本事例は、輸出事業への参入を目的とした輸出酒類卸売業免許の新規取得です。需給調整要件が不要であること、書面審査のみで完結するケースが多いことから、酒類の卸売免許の中では比較的取得しやすい区分といえます。本件では申請から約28日という短期間で免許が交付されました。
この免許取得を起点として、翌2022年に奈良県での酒類蔵置場設置許可通知書の取得、2024年に条件緩和による国内一般小売の追加と、段階的に事業の法的基盤を整備しています。輸出事業の立ち上げにあたって複数の手続きが必要になる場合も、当事務所では一括してサポートいたします。










