IT業界で会社を経営していますが、新たな事業としてクラフトビールを提供する飲食店を開業したいと考えています。
飲食業は未経験のため、どのような許認可が必要なのか、また異業種から参入する場合に注意すべき点が分かりません。
お酒を扱う場合、飲食店営業許可以外にも取得しておくべき免許はあるのでしょうか?
結論から申し上げますと、飲食店として店内でお酒を提供するだけであれば「飲食店営業許可」があれば足ります。
ただし、クラフトビールやワインなどを店外販売する場合や、持ち帰り・EC販売を行う場合には、「一般酒類小売業免許」や「通信販売酒類小売業免許」など、別途酒類販売業免許が必要になります。
異業種からの飲食参入では、
・事業内容に合った許認可の選択
・店舗レイアウトと免許要件の整合性
・将来的な販売形態(店内提供のみか、物販・ECまで行うか)
を開業前に整理しておくことが非常に重要です。必要な許認可や実務上の注意点をわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
近年、本業とは異なる分野から飲食業界へ参入する企業が増えています。特に、インバウンド需要の回復に伴い、観光地や繁華街での「カフェバー」形態の出店相談が急増しています。
しかし、単に飲食店を開業するだけでなく、「店内で提供しているお酒を、お土産として持ち帰りたい」という顧客の要望に応えるには、通常の飲食店営業許可だけでは不十分であることをご存知でしょうか?
今回は、WEBマーケティング会社が原宿という一等地で、「コーヒーとクラフトビール」を主軸にした新業態を立ち上げた事例をご紹介します。異業種参入ならではの勝算のあるビジネスモデルと、それを実現するために不可欠だった「酒類販売業免許」の取得プロセスについて、行政書士の視点から徹底解説します。
目次
1. 事例の背景:WEB会社がなぜ「原宿」で「飲食」を?
きっかけは「プロデュース力」への評価
今回のクライアント様(以下、A社様)は、もともと飲食業を生業とする会社ではありませんでした。本業はWEBサイト制作やSNS運用を行うマーケティング企業です。
きっかけは、A社様がある商業施設のWEBサイトやSNS運用を担当していたことでした。その実績とプロデュース能力が高く評価され、施設側から「御社でプロデュースする飲食店を出店してみないか」と打診を受けたのが全ての始まりです 。
異業種参入のハードルと組織づくり
しかし、A社様は飲食のプロではありません。そこで、既存の会社で直接運営するのではなく、リスク管理と経営の明確化を図るため、新たに飲食店運営を目的とした株式会社を設立されました 。
ここで特筆すべきは、ご家族の協力体制です。お一人での経営はリソース的に難しいため、奥様が新会社の社長に就任し、実際に現場に立って日々の業務を行う体制を整えました 。これは、小規模事業者が異業種参入する際、経営判断と現場オペレーションを分担する非常に有効な手段といえます。
2. ここが落とし穴!「店内で飲む」と「買って帰る」は法律が違う
A社様のビジネスプランには、もう一つ重要な柱がありました。それは、「気に入ったビールを缶のまま購入して持ち帰ってもらう(物販)」*ことです 。
ここで行政書士として強く注意喚起したいのが、「飲食店営業許可」と「酒類販売業免許」の違いです。
飲食店営業許可だけでは「持ち帰り販売」は違法
保健所で取得する「飲食店営業許可」は、あくまで「店内で飲食させること」に対する許可です。
- 〇 店内でグラスに注いでビールを提供する。
- 〇 店内で栓を抜いて缶ビールを提供する。
- × 未開栓の缶ビールを、お土産として袋に入れて売る。
未開栓のお酒を販売(テイクアウト販売)するには、税務署が管轄する「一般酒類小売業免許」が必要になります。A社様は、店内提供だけでなく、缶ビールでの物販も行う計画であったため、この免許の取得が必須条件となりました 。
3. 酒類販売業免許取得の壁と解決策
「一般酒類小売業免許」は、飲食店営業許可に比べて取得難易度が格段に上がります。今回のケースで特にポイントとなった要件を解説します。
① 「場所的要件」:売り場と飲食スペースの区分
免許取得には、お酒を販売する場所(売り場)と、それ以外の場所(特に飲食スペース)が明確に区分されている必要があります。 今回の店舗は、10:00~20:00営業のカフェバウスタイル 。限られた店舗面積の中で、どこを「物販エリア」とし、どこを「飲食エリア」とするか、図面上での厳密な線引きが求められました。 当事務所では、レジ周りや冷蔵ショーケースの配置を含め、税務署の審査基準を満たすレイアウトのアドバイスを行いました。
② 「経営基礎要件」:新設会社の信用力
免許審査では、会社に「お酒を仕入れて販売し続けるだけの資金力と経営能力があるか」が厳しくチェックされます。 A社様の場合、新設したばかりの株式会社であり、決算実績がありません 。通常、直近3期分の決算書などで赤字がないことを証明しますが、新設法人の場合は「開始貸借対照表」や「事業計画書」、そして経営経験や支援体制などを通じて、財務的基盤の強固さを立証する必要があります。
③ 仕入先の確保
免許申請時には、「どこのメーカー・卸からお酒を仕入れるか」の記載する必要があります。 A社様は、こだわりのクラフトビールを扱うため、仕入先と交渉を進めていました。特に「販売用」として、特定の人気ブルワリーから直接(または特定のルートで)仕入れる場合、事前にしっかりとした合意形成が必要です。人気銘柄を扱うことは集客上の大きな武器になりますが、免許申請上は「安定的な仕入れルートの証明」としても機能します。
4. スケジュール管理の重要性:お問い合わせから1ヶ月半でのスピード取得
今回のプロジェクト最大の見どころは、そのスピード感です。 「11月末の店舗オープンに合わせて、初日からお酒の販売も行いたい」という強いご要望に応えるため、当事務所とA社様が密に連携し、最短ルートで手続きを進めました。
実際の申請タイムライン
- 10月7日:当事務所への初回お問い合わせ
- 10月15日:管轄税務署へ免許申請書類を提出
※お問い合わせからわずか1週間あまりで、複雑な書類作成と添付書類の収集を完了させ、本申請を行いました。 - 10月27日:店舗工事完了
- 11月12日:酒類販売業免許の審査終了
- 11月27日:酒類販売業免許 付与
※店舗オープン予定日の当日に免許が下りました!
通常、酒類販売業免許の標準処理期間(審査にかかる時間)は「概ね2ヶ月」と言われています。しかし今回は、事前の準備を徹底し、補正(修正)の指示が入らないよう完璧な書類を作成したことで、約1ヶ月半という早さで免許を取得することができました。
結果として、11月27日のオープン初日から、予定通り「クラフトビールの物販」をスタートさせることができ、機会損失を防ぐことに成功しました。
5. これから飲食×物販を目指す方へ
今回のA社様の事例は、原宿という立地特性と、Webマーケティングという自社の強みを活かしつつ、専門的なハードル(酒販免許)をプロに任せることでクリアした成功モデルです。
改めて、異業種から「お酒の物販」を伴う飲食店を開業する際のポイントをまとめます。
- 法人化の検討: リスク管理や免許取得の主体として、別会社化(株式会社設立など)が有効な場合があります。
- 早期の着手: 酒類販売業免許は審査に2ヶ月かかります。物件契約前からの相談がベストです。
- 商材の選定: 扱いたいお酒(特にクラフトビールなど)の仕入先が、販売用として卸してくれるか事前に確認が必要です。
- 場所の区分: 店舗レイアウトを決める前に、必ず専門家に「免許が降りる配置か」を確認してください。
行政書士に依頼するメリット
酒類販売業免許の申請書類は多岐にわたり、事業計画書の作成や図面の作成など、専門的な知識が必要です。また、税務署担当官との事前相談や折衝も不可欠です。 自分たちで行おうとして、「書類の不備で何度も税務署に通い、オープンに間に合わなかった」という失敗談は後を絶ちません。
当事務所では、単なる書類作成代行にとどまらず、A社様のように「どのようなビジネスモデルで成功させたいか」という想いに寄り添い、最適な免許取得スキームをご提案いたします。
「カフェでお酒を売りたい」「自社ブランドのビールを作って販売したい」といった構想をお持ちの方は、物件を決める前に、まずは一度ご相談ください。あなたのビジネスの「勝算」を、確実な「許可」へと繋げるお手伝いをさせていただきます。
【お問い合わせ】 これから飲食店の開業、酒販免許の取得をお考えの事業者様は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。初回相談は無料です。










