飲食店が酒類販売業免許を取得するには?許可の条件と申請のポイントを行政書士が解説
飲食店でお酒をグラスに注いで提供するだけなら、飲食店の営業許可があれば問題ありません。しかし、未開栓の状態で持ち帰れる物販をする場合は、別途酒類販売業免許が必要です。コロナ禍以降、テイクアウト・ネット販売・店頭販売などを始めたい飲食店からの相談が増えていますが、飲食店は通常よりも審査が厳しく、取得のハードルが高い点を知らない方も少なくありません。この記事では、飲食店が酒類販売業免許を取得するための条件と、審査で確認されるポイント、そしてフードデリバリー・テイクアウトに関する最新の運用まで詳しく解説します。
📌 このページのポイント
・飲食店営業許可と酒類販売業免許はまったく別の制度
・飲食店併設での申請は仕入・場所・売上の3区分が必須で通常より審査が厳しい
・令和5年7月の手引き改訂で、県またぎの近隣デリバリーが一般酒類小売業免許で対応可能であることが明文化(従前から実務上認められていた取扱い)
・Uber Eats・出前館等のフードデリバリーも配送範囲次第で一般酒類小売業免許のまま対応可
・当事務所は飲食店併設での免許取得実績多数(初回相談無料)
飲食店がお酒を「提供」するのと「販売」するのは何が違うのか
飲食店でお酒をグラスに注いで客に出すのは「提供」であり、飲食店の営業許可の範囲内です。一方、未開栓のボトルをそのまま手渡す、テイクアウト用に袋に入れて販売する、ネットで注文を受けて配送するといった行為は「販売」に該当し、酒類販売業免許が必要になります。
| 行為 | 必要な許可 |
|---|---|
| グラスに注いで店内で提供 | 飲食店営業許可のみ |
| 未開栓ボトルを店頭で販売 | 一般酒類小売業免許 |
| テイクアウト・近隣デリバリー | 一般酒類小売業免許 |
| インターネットで全国に販売 | 通信販売酒類小売業免許 |
飲食店は通常より審査が厳しい理由
酒税法では、以下の2つの要件が定められています。
場所的要件(酒税法10条9号):酒類の販売場が「酒場または料理店等と同一の場所でないこと」
需給調整要件(酒税法10条11号):申請者が「酒場、旅館、料理店等酒類を取り扱う接客業者でないこと」
この背景には、酒類販売業免許を取得すると卸売価格での仕入れが可能になるという事情があります。もし飲食店がこの卸価格の仕入れを店内提供用にも転用できてしまうと、通常の小売価格で仕入れている他の飲食店より仕入れコストを下げられることになり、周辺の飲食店との競争上の不公平が生じます。
つまり、飲食店の営業をしながらそのまま酒類販売業免許を申請しても、原則として認められません。飲食と酒類販売が「同一の場所・同一の経営主体」とみなされるためです。
ただし、以下の3点を満たすことができると認められれば、免許取得は可能です。
免許取得のための3つの区分
1. 仕入れる酒類の区分
販売用のお酒と、店内提供用のお酒は、仕入れ先を分ける必要があります。
販売用は酒類製造者または酒類卸売業者から仕入れ、提供用は酒類製造者または酒類小売業者から仕入れるのが原則です。
なお、飲食店に業務用としてお酒を販売している業者は、感覚的には「卸売」のように見えますが、酒税法上は「小売」に分類されます。飲食店は消費者として購入しているためです。そのため、業務用卸売業者の多くは小売免許のみを持っており、こうした業者からは販売用酒類を仕入れることができません。
仕入れ先の選定に不安がある場合は、申請前に確認しておくことをお勧めします。申請時には、販売用と提供用の納品書等の様式を分けて作成してもらい、税務署に提出して区分できることを証明する場合があります。
2. 販売場の区分
酒類の販売場と飲食スペースが、明確に区分されている必要があります。
免許が交付されると、免許通知書の2ページ目に販売場のレイアウト図が添付され、販売場所が具体的に指定されます。そのため、「ここが販売場です」と明示できる場所が必要です。
区分の方法については以下のような基準があります。
扉のついた独立した部屋が最も明確ですが、固定されたパーテーションでの区切りも認められる場合があります。ただし、簡単に移動できる可動式のパーテーションは「明確な区分」とは認められません。
2021年頃から東京近郊の税務署では、販売用冷蔵庫と提供用冷蔵庫を別々に用意できれば場所的要件をクリアできる傾向があります。この場合は販売用冷蔵庫とレジの場所が販売場として免許されます。ただし税務署によって判断が異なるため、事前確認が重要です。
3. 売上・在庫の区分
販売用と提供用の酒類は、受け払い・在庫管理を別々に記帳・管理する必要があります。販売用と提供用を相互に転用することはできません。税務署によっては、転用しないことの誓約書の提出を求める場合もあります。
レジについては、販売用と提供用で別々のレジを用意するのが望ましいですが、POSレジで販売用商品を登録して管理できると確認できれば、1台でも問題ないとされるケースが多いです。この場合、POSレジの商品登録画面を印刷して税務署に提出し、レシートでも販売用酒類が区別できることをサンプルで確認してもらう場合があります。
免許取得後は、仕入れ・販売の記帳義務と年間販売数量の報告義務が生じます。販売した数量を正確に記録できる体制を整えておくことが必要です。
💡 こんな方は、まずご相談ください
「自分の店でテイクアウトやデリバリーの販売を実現したい」という方は、店舗の状況に応じた具体的なプランをご提案します。当事務所は飲食店併設での酒類販売業免許取得実績が多数あり、初回相談は無料です。
飲食店が取得すべき免許の種類
店頭販売・テイクアウト・近隣デリバリーをしたい場合
一般酒類小売業免許が必要です。販売できる酒類の品目や数量に制限はありません。
インターネットで全国に販売したい場合
通信販売酒類小売業免許が必要です。ただし、販売できる国産酒類は年間製造量が3,000キロリットル未満の酒造会社が製造したものに限られます。また、この免許で販売できる国産酒類については、製造元が発行する証明書が必要です。大手メーカーの商品を通販で販売したい場合は、一般酒類小売業免許と組み合わせて取得するケースが多いです。
他の飲食店や酒販店に卸したい場合
卸売をしたい相手が飲食店である場合は、一般酒類小売業免許の範囲です(飲食店は消費者として購入するため小売扱い)。他の酒類販売業免許を持つ事業者に販売する場合は、別途卸売免許が必要になります。
【令和5年7月改訂】近隣エリアへのデリバリーは県またぎでも一般酒類小売業免許で対応可
💡 令和5年7月の手引き改訂で明文化
販売場の近隣エリア(商圏)であれば、県をまたぐデリバリーも一般酒類小売業免許で対応できる、という取り扱いは従前から実務上認められていました。令和5年7月の手引き改訂により、この運用が文書で明確化されました。
改訂内容の概要
国税庁の手引きに以下の文言が追加されました。
ただし、県を跨がる(2都道府県以上の)電話やインターネット等による受注販売であっても、一般的に自己の販売場の近隣エリア(商圏)であれば、一般酒類小売業免許による販売が可能です。
この明文化はフードデリバリーサービスの利用拡大も背景にあると考えられますが、それ以前から実務上は同様の取り扱いがされていました。改訂により、申請者が安心して計画できる文書根拠が整備された形です。
💡 当事務所の実例
当事務所では、東京都世田谷区を販売場として、神奈川県川崎市の一部を配達エリアに含むケースで、一般酒類小売業免許での対応を実現した実績があります。県境に近い立地で、川崎市の一部が「近隣エリア(商圏)」に含まれると判断された事例です。これは令和5年7月の手引き改訂より前の事例で、改訂前から実務上はこのような取り扱いが認められていました。
「近隣エリア(商圏)」とは
「近隣エリア(商圏)」の具体的な範囲については明確な基準が示されていません。一般的には以下のような考え方となります。
- 都道府県の境界周辺に立地する販売場が、隣接する都道府県の一部に配達するケース
- 販売場から自転車・バイクで配達可能な範囲
- フードデリバリープラットフォームが指定する標準的な配達範囲
ただし、「商圏」の定義は個別ケースで判断されるため、税務署の判断を仰ぐことが安全です。
判断に迷ったら税務署の酒類指導官へ
「近隣エリア(商圏)」の判断は個別事情によって異なるため、判断に迷う場合は必ず税務署の酒類指導官に相談することをお勧めします。事前相談により、申請後に「免許範囲外の販売」と判定されるリスクを避けられます。
フードデリバリーサービスでお酒を販売する場合
Uber Eats・出前館・menu等のフードデリバリープラットフォーム経由でお酒も提供したい、というご相談が近年増えています。
酒類販売業免許を取得した上で、配送範囲が一定の近隣エリア(商圏)内であれば、一般酒類小売業免許で対応できる場合があります。配送先が広範囲にわたる場合や、自社サイト・アプリで全国に受注する場合は、通信販売酒類小売業免許も検討が必要です。
プラットフォームのアカウント開設前に、必要な免許を整理することをお勧めします。また、フードデリバリーでは受渡時の年齢確認体制も重要な運用ポイントです。配達員による年齢確認の仕組みを整えているかも、免許取得後の適正な販売管理として求められます。
業態別の判断とお勧めの免許
中華料理店・居酒屋など
ランチタイムの持ち帰り、夜の配達需要が中心。配達範囲は一般的に近隣エリアに限られるため、一般酒類小売業免許で対応可能なケースが多くなります。
ワインバー・ダイニングバー
ボトル販売や、お客様の希望に応じた特別なワインの取り寄せ販売が想定されます。店頭テイクアウト中心なら一般酒類小売業免許、ECサイトでの全国展開を考えるなら通信販売酒類小売業免許も必要となります。提供しているワインと販売したいワインが同一銘柄の場合は、前述の「仕入れの区分」が特に重要になります。
ホテル・旅館の中の飲食店
宿泊客の客室への配達、お土産としてのテイクアウト販売が想定されます。販売場をホテル内のどこに置くか、宿泊事業との区分をどう整理するかが重要なポイントです。
費用の目安
| 申請パターン | 登録免許税 |
|---|---|
| 一般酒類小売業免許のみ | 30,000円 |
| 一般酒類小売業免許+通信販売酒類小売業免許(同時申請) | 30,000円(小売の上限) |
同一販売場での同時申請なら登録免許税は変わりません。詳しくは登録免許税を最安にする方法のページをご覧ください。これに加えて行政書士へ依頼する場合は報酬が別途かかります。
よくある質問
Q. バーやワインバーがワインを店頭販売する場合も同じ審査ですか? はい、同様の審査基準が適用されます。ただし、提供している酒類と販売したい酒類が同一品目(ワインなど)になる場合は、仕入れ先の区分がより重要になります。
Q. 飲食店と酒類販売業を別法人にすれば審査は通りやすくなりますか? 販売場が物理的に同一の場所であれば、法人を分けても場所的要件の問題は解消されません。一方、飲食店の運営法人とは別に酒類販売専用の法人を設立し、販売場所も完全に独立させるのであれば、通常の新規申請として審査されます。
Q. 酒類販売管理者は別に選任が必要ですか? 小売免許を取得する場合は、酒類販売管理者の選任と届け出が必要です。飲食店のスタッフを管理者として選任することができます。
Q. 近隣にデリバリーする場合、県をまたいでも一般酒類小売業免許で対応できますか? 対応できる場合があります。販売場の近隣エリア(商圏)であれば、2都道府県以上にまたがる電話・インターネット等による受注販売であっても、一般酒類小売業免許で対応可能というのは、従前から実務上認められていた取り扱いで、令和5年7月の手引き改訂により明文化されました。当事務所では世田谷区から川崎市への配達など、県境を越えた近隣エリアでの対応実績があります。
Q. Uber Eatsや出前館のようなフードデリバリーサービスでお酒を販売できますか? 酒類販売業免許を取得した上で、配送範囲が一定の近隣エリア(商圏)内であれば、一般酒類小売業免許で対応できる場合があります。配送先が広範囲にわたる場合や、自社サイト・アプリで全国に受注する場合は、通信販売酒類小売業免許も検討が必要です。
Q. 飲食店が酒類販売業免許を取得するにはどれくらい費用がかかりますか? 登録免許税は一般酒類小売業免許で30,000円、通信販売酒類小売業免許と同時申請しても30,000円(小売の上限)です。これに加えて行政書士へ依頼する場合は報酬が別途かかります。
まとめ
飲食店が酒類販売業免許を取得するためには、①仕入れの区分、②販売場の区分、③売上・在庫の区分の3点を整備することが必要です。通常の申請よりも審査が厳しく、税務署によって判断基準が異なる部分もあるため、事前の確認と準備が欠かせません。
また、令和5年7月の手引き改訂で明文化されたとおり、近隣エリア(商圏)であれば県をまたぐデリバリーも一般酒類小売業免許で対応可能です。Uber Eatsや出前館などのフードデリバリーサービスへの対応も、配送範囲を整理すれば一般酒類小売業免許の範囲で始められるケースが多くあります。
行政書士岩元事務所では、飲食店からの酒類販売業免許申請を多数サポートしてきた実績があります。「自分の店で取得できるか」「何から準備すればよいか」「フードデリバリーも始めたい」といったご相談も承っています。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
関連ページ・詳しい解説
- 一般酒類小売業免許の申請代行
- 通信販売酒類小売業免許の申請代行
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- 登録免許税を最安にする方法
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