通常とは異なる方法で熟成させたお酒を販売する場合、販売業免許だけでなく、その熟成方法が酒税法上の「製造」に該当しないか確認が必要になることがあります。
今回は、東京都品川区で飲食店を経営する事業者様からご依頼をいただき、静岡県南伊豆の海底で熟成させたウイスキーを販売するため、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許の取得をお手伝いしました。
審査では、海底での熟成行為が酒類の「製造」に該当しないかについて税務署から確認がありましたが、最終的には酒類販売業免許の範囲で取り扱えるものとして整理され、製造免許を取得することなく販売を開始することができました。
特殊な熟成方法を用いた酒類を販売する場合の参考となる事例として、申請の概要と審査上のポイントをご紹介します。
1. 事例の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 依頼者の業種 | 飲食店経営者 |
| 販売場所 | 東京都品川区(事務所) |
| 取得免許 | 一般酒類小売業免許/通信販売酒類小売業免許 |
| 販売する酒類 | 静岡県南伊豆で海底熟成させたウイスキー |
| 申請日 | 2016年7月11日 |
| 免許交付日 | 2016年9月16日 |
| 申請から交付まで | 約2ヶ月 |
2. ご相談の経緯
依頼者は飲食店を長年経営してきた事業者で、今回は飲食店舗とは別に、事務所を販売場として酒類販売業免許を取得しました。販売するお酒は、静岡県南伊豆の海底で熟成させたウイスキーです。
この事業は単なる酒類販売にとどまらず、地元の漁協や役所と連携した地域活性化の取り組みとしても位置づけられており、南伊豆の町おこしの一環として展開される予定でした。長年の飲食業経営で培った酒類の知識とネットワークを活かし、独自性の高い商品の販売事業に乗り出した事例です。
3. この事例のポイント①:海底熟成は「酒類製造」に該当しないか審査で確認された
今回の審査で特に確認事項となったのが、海底熟成が酒類税法上の「製造(再製造)」に該当しないかという点です。
酒類に手を加えて性質を変化させる行為は、酒類製造免許が必要な「製造」とみなされる場合があります。海底という特殊な環境での熟成については、通常の倉庫・セラーでの保管・熟成とは異なる行為に見える可能性があるため、税務署から熟成を行う場所・方法・工程について詳しく確認されました。
今回は、海底熟成の内容が酒類販売業の範囲内として整理でき、製造免許は不要と判断されたため、販売業免許のみで対応できました。海底熟成・船上熟成・洞窟熟成といった特殊な環境での熟成を伴う酒類販売を計画している場合は、事前に管轄税務署に熟成方法を説明し、製造に該当しないかどうかを確認しておくことが重要です。
4. この事例のポイント②:飲食店経営の経験が販売業免許の審査でも評価される
酒類販売業免許の取得には、申請者が酒類販売業を適正に経営できる経験・能力があることが求められます。依頼者は飲食店を長年経営してきた実績があり、酒類の仕入れ・管理・販売に関する実務経験を持っていました。これが審査において申請者の経歴として評価され、スムーズな免許取得につながりました。
飲食店経営者が新たに酒類小売販売事業を始める場合、飲食業での酒類取り扱い経験は販売業免許の申請において有利に働きます。
5. よくある質問
Q. 海底熟成・洞窟熟成など特殊な環境での熟成を計画していますが、必ず酒類製造免許が必要になりますか?
熟成の内容・方法によります。本事例のように、熟成が酒類の性質を新たに作り出す「製造」に該当しないと整理できれば、販売業免許のみで対応できる場合があります。ただし個別の判断が必要なため、計画段階で管轄税務署への事前確認をおすすめします。
Q. すでに完成した市販のウイスキーを仕入れて独自に熟成させる場合も、同じ論点になりますか?
はい、同様の論点が生じます。既製品に対して熟成等の手を加える場合、その行為が酒税法上の「製造(再製造)」に該当しないかが審査で確認される可能性があります。
Q. 飲食店経営者が新たに酒類の小売販売を始める場合、飲食業の経験はどのように評価されますか?
酒類の仕入れ・管理・販売に関する実務経験として、経営基礎要件の判断材料になります。本事例のように、長年の飲食店経営で培った経験が、販売業免許の審査でプラスに評価されることがあります。
Q. 地域活性化・町おこしと連携した事業の場合、通常の申請と何か違いはありますか?
免許審査の基本的な要件自体は変わりません。ただし、漁協や自治体との連携など、事業の背景や販売計画を具体的に説明できると、事業の実現可能性を示すうえで有利に働くことがあります。
まとめ
- 海底熟成など特殊な環境での熟成を伴う場合、酒類製造(再製造)に該当しないかが審査の確認事項となる。事前に税務署へ熟成方法を説明・確認しておくことが重要
- 熟成が販売業の範囲内と整理できれば、製造免許は不要で販売業免許のみで対応可能
- 飲食店経営での酒類取り扱い経験は、酒類販売業免許の審査において経歴として評価される
- 販売場は飲食店舗とは別の事務所として設定。店舗と別の場所で販売業免許を取得することも可能
海底熟成・特殊熟成を伴う酒類販売、飲食店経営者による酒類小売事業の立ち上げについてご相談がある方は、お気軽にお問い合わせください。










