酒類販売業免許の取得傾向|2,000件超の申請実績から見えること

最終更新:2026年3月 行政書士・社会保険労務士 岩元事務所

当事務所はこれまでに2,000件以上の酒類販売業免許申請を取り扱ってきました。このページでは、その依頼実績をもとに「どの免許が多く取られているか」「どの都道府県からの依頼が多いか」「よく組み合わせて取得される免許パターン」を解説します。

これから酒類販売業免許の取得を検討されている事業者さまにも、すでに免許を持っていて追加取得を検討されている方にも参考になる内容です。

※ 本データは当事務所への依頼実績をもとにした傾向分析であり、全国の許可件数を反映したものではありません。

1. 免許種別の取得傾向

依頼件数の多い順に免許種別をまとめました(1件の申請で複数の免許を同時取得するケースがあるため、順位は種別ごとの取得数をもとにしています)。

 

免許種別 取得数順位 概要・特徴
一般小売 最多 店頭・対面での小売販売(最も基本的な免許)
通信販売 2位 ネット・通販・カタログ販売。一般小売と同時取得が多い
輸出卸 3位 海外バイヤーへの卸売。日本酒・焼酎の輸出需要で増加傾向
洋酒卸 4位 洋酒(ワイン・ウイスキー等)の国内卸売
輸入卸 5位 自己輸入酒類の国内卸売。洋酒卸との組み合わせが定番
条件緩和 6位 既存免許の品目制限を拡張する変更申請
移転 7位 販売場所の移転届
自己商標 8位 自社ブランド酒類の卸売(クラフト系・PB商品向け)
期限付き 9位 祭事・イベント等の一時的販売
酒類製造 10位 醸造・蒸留免許(製造から販売まで一貫して申請)
店頭販売 特定の相手方店頭での卸売(卸売業者向け)
全酒類卸 全ての酒類の卸売(要件が最も厳しい卸売免許)

 

一般小売と通信販売が群を抜いて多い

取得数第1位は一般小売、第2位は通信販売です。この2つで依頼全体の大部分を占めており、酒類販売業免許のニーズが「店頭小売」と「通販」に集中していることがわかります。

特に通信販売免許は、実店舗を持たないEC専業事業者や越境ECを展開したい企業からの申請が増加しており、近年は一般小売とほぼ同水準の需要となっています。

輸出卸・洋酒卸・輸入卸が続く

3位以下には輸出卸・洋酒卸・輸入卸と、貿易・卸売系の免許が並びます。日本酒や焼酎の海外輸出需要の高まりを背景に、輸出卸免許の申請は2018年頃から顕著に増加しています。洋酒卸・輸入卸は、ワインやウイスキーを中心とした輸入酒類の国内流通を手がける事業者からの依頼が中心です。

2. よく組み合わせて取得される免許パターン

実績を分析すると、1回の申請で2〜3種類の免許を同時取得するケースが多くあります。2免許同時取得の組み合わせ上位5パターンは以下のとおりです。

 

順位 組み合わせ 頻度 背景・特徴
一般小売 + 通信販売 最多 実店舗とネット通販を同時に整備するスタンダードパターン
一般小売 + 洋酒卸 2位 輸入洋酒を仕入れてB2B卸と小売を併営
洋酒卸 + 通信販売 3位 洋酒インポーター系。卸売と通販チャネルの同時整備
一般小売 + 輸入卸 4位 輸入業者が自社商品の小売まで手がけるパターン
輸入卸 + 通信販売 5位 越境EC・インポーターのオンライン販売チャネル確保

 

「一般小売+通信販売」は圧倒的な定番

最多の組み合わせは「一般小売+通信販売」。実店舗を構えながら通販チャネルも同時に整備するスタンダードパターンです。販売チャネルの多様化を見据えれば、最初からセットで取得しておくのが合理的です。

3免許同時取得も珍しくない

3免許の組み合わせで最も多いのは「一般小売+洋酒卸+通信販売」。次いで「一般小売+輸入卸+通信販売」と続きます。輸入業者が小売・通販・卸売を一度に整備するケースや、酒類専門商社が複数の販売形態を同時申請するケースが典型です。

複数免許を同時申請することで、税務署への書類提出を一本化でき、許可取得までの期間を短縮できるメリットがあります。

3. 免許取得の大前提と、種類を絞る判断

酒類販売業免許は、申請時点で「取得後すぐに販売を開始できる状態にある」ことが前提です。「将来やるかもしれない」「いずれ始める予定」という理由では、税務署は免許を交付しません。申請する免許の種類は、現時点の事業計画に基づいて判断する必要があります。

その上で、複数の免許を同時取得する際に知っておきたい点が2つあります。

小売免許には酒類販売管理者の選任義務がつく

酒類小売業免許(一般小売・通信販売)を取得すると、販売場ごとに酒類販売管理者を選任し、3年ごとに研修を受講し続ける義務が生じます。卸売業のみで事業を行う場合、この義務はありません。

卸売がメインの事業者が「小売もいずれやるかも」という理由で小売免許を同時取得すると、実際に小売を行っていなくても管理者研修の義務が継続します。また、後から「卸売は続けるが小売免許だけ返納したい」という対応はできません。取得した免許の種類を部分的に廃止することはできず、不要になっても義務だけが残り続ける点に注意が必要です。

卸売のみで事業を行うのであれば、小売免許は申請しないという判断が合理的な場合もあります。

輸入卸売免許が後から必要になるパターン

「自分で輸入して飲食店に直接販売するから輸入卸売免許は不要」と考える事業者もいます。確かに、輸入した酒類を自ら直接消費者や飲食店に販売するだけであれば小売免許で対応できます。

しかし実務上は注意が必要です。飲食店は特定の問屋からまとめて仕入れる商習慣が根強く、数店舗との直接取引ができても、顧客を増やしていく段階では問屋(酒類卸売業者)経由の販売が効率的になります。問屋に対して酒類を販売するには卸売免許が必要になるため、事業規模の拡大を見据えるなら最初から輸入卸売免許も取得しておくことを検討する価値があります。

どの免許が現時点の事業計画に必要で、将来どの免許が追加で必要になり得るか。この整理を申請前に行うことが、無駄のない免許取得につながります。

4. 都道府県・地域別の依頼分布

依頼の多い都道府県の内訳と傾向は以下のとおりです。

 

都道府県 依頼割合 傾向・特徴
東京都 約56% 国内最大の消費市場かつ法人本社が集中。税務署数も多く経験が物を言う
神奈川県 約7% 港湾・輸出入拠点。輸出卸・輸入卸の依頼が多い
千葉県 約6% 成田空港周辺の輸出入関連が中心
埼玉県 約6% 首都圏ECの物流拠点として通販免許の需要が高い
大阪府 約2% 関西圏ではダントツ。食品卸・飲食関連が中心
静岡県 約2% 日本酒・クラフトビール製造拠点。製造免許の依頼も
愛知県 約2% 中部圏の流通拠点。卸売系の依頼が目立つ
茨城県 約2% 農産物輸出と連動した輸出卸・EC系が増加

 

東京都だけで全体の約半数以上

東京都からの依頼が全体の約56%を占めています。この傾向は当事務所の実績だけでなく、国税庁が公表する「酒類販売業免許の新規取得者名等一覧」からも裏付けられます。令和8年1月の新規取得件数を見ると、東京都だけで144件、東京国税局管内(東京・神奈川・千葉・山梨)合計では223件にのぼります。なお、これらにはコンビニ・ドラッグストアのフランチャイズ店舗分も多く含まれており、新規に事業を立ち上げて免許を取得する件数はこれより少なくなります。それでも首都圏への集中度は他の地域と比べて際立っており、管轄税務署ごとに書類要件や審査の進め方が異なるため、都内各税務署への対応経験が豊富な専門家への依頼が特に多い傾向があります。

首都圏4都県で全体の約4分の3

東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏4都県を合計すると全体の約75%を占めます。神奈川・千葉は港湾・空港を通じた輸出入拠点、埼玉はEC物流の集積地として、それぞれ特定の免許種別に需要が集中する傾向があります。

一方、大阪・静岡・愛知など地方圏からの依頼もコンスタントにあり、近年は全国対応の問い合わせが増加しています。

5. まとめ:免許取得前に押さえておきたいポイント

2,000件以上の実績から見えてくる傾向を整理すると、以下のポイントが重要です。

  • 免許は「すぐに始める」前提で申請する。将来やるかもしれないという理由では取得できない。
  • 取りたい免許は最初から複数まとめて申請するのが効率的。「一般小売+通信販売」はセット取得が定番中の定番。
  • 卸売のみの事業なら小売免許は不要。取得すると酒類販売管理者の選任・研修義務が継続し、後から小売免許だけを廃止することもできない。
  • 輸入して飲食店へ販売する場合でも、事業拡大で問屋への卸売が発生するなら輸入卸売免許が必要になる。最初から取得しておくかどうかは事業計画次第。
  • 税務署ごとに書類要件や審査の進め方が異なるため、管轄税務署への対応経験が豊富な専門家への依頼が申請をスムーズにする。

 

当事務所では酒類販売業免許申請のご相談を随時承っております。どの免許が必要か、複数免許を同時に申請できるかなど、まずはお気軽にお問い合わせください。

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  • 販売方法は?(ワインを飲食店に販売、日本酒を通信販売、ウイスキーの輸出、など)
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