【事例】貿易会社が一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許を同時取得―福岡県・輸入酒類の小売・通販参入
概要
ロシア・ウクライナ戦争に伴う経済制裁でロシア向け輸出が激減し、事業転換を迫られた福岡県の貿易会社が、海外の食品・お土産・酒類の国内小売・通販事業に参入するため、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許(輸入酒類のみ)を同時に取得した事例です。本社がバーチャルオフィスであったため販売場の確保が課題となりましたが、別途事務所を賃借することで解決しました。免許取得後は条件緩和の手続きにより取り扱い品目を段階的に拡大しています。
依頼者の状況
依頼者は令和元年(2019年)に設立した法人で、船舶総代理店業と貿易業を主な事業としています。福岡本社では建設財・日用品・食品の輸出を行い、新潟県上越市の直江津支店では船舶代理店業と中古車輸出を手がけていました。主な販売先はロシアと韓国です。
ところが、ロシア・ウクライナ戦争の長期化に伴う経済制裁の影響で、ロシア向け輸出量がピーク時から約80%減少。従来の事業モデルでの継続が困難になったことから、新たな事業の柱として海外の食品・お土産・酒類を国内で小売販売・通信販売する事業への参入を検討し、酒類販売業免許の取得をご依頼いただきました。
ポイント
① 一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許の同時申請
店頭販売と通信販売の両方を予定していたため、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許を同時に申請しました。複数の免許を一度に申請することは可能で、審査は並行して進みます。
通信販売酒類小売業免許は取り扱える酒類の品目に制限があります。国産酒類については「課税移出数量が3,000キロリットル未満のメーカーが製造した酒類」に限られますが、輸入酒類についてはこの数量要件がなく、すべての輸入酒類が通信販売の対象になります。今回は輸入酒類のみを通信販売する計画でしたので、この点は問題ありませんでした。
② 販売場所の確保――バーチャルオフィス問題への対応
酒類販売業免許は、酒類の販売業務を行う実態のある場所(販売場)に対して付与されます。申請時点で依頼者の本社はバーチャルオフィスでした。バーチャルオフィスは郵便物の受け取りや登記上の住所として利用できますが、実際に業務を行う実体がないため、酒類販売業免許の販売場としては認められません。
自宅(一軒家)を販売場とする案も検討しましたが、最終的には別途、実態のある事務所を賃借して申請することになりました。これにより、販売場の要件を問題なく満たすことができました。
なお、「自宅=販売場」という選択肢が完全に否定されるわけではありませんが、賃貸契約の内容(事業利用の可否)や生活スペースとの区分など、確認事項がいくつかあります。ご自宅での申請を検討されている場合は、事前にご相談ください。
③ ロシア向け輸出減少という経営環境の変化と経営基礎の審査
酒類販売業免許の審査では、申請者の経営基礎(財務の健全性・事業の継続可能性)が問われます。売上の大部分を占めていたロシア向け輸出が激減しているという状況は、審査上の懸念点になり得ます。一方で、依頼者は設立以来複数の事業を国際的に展開してきた実績があり、財務内容や今後の事業計画を丁寧に説明することで、経営基礎の安定性を示すことができました。
④ 申請から約40日での免許取得
2024年(令和6年)10月23日に申請し、同年12月2日に免許が付与されました。標準的な審査期間は申請受付から約2か月とされていますが、本件はそれよりも短い約40日での取得となりました。
まとめ
本事例は、ロシア向け輸出減少を機に事業転換を図り、海外の食品・酒類等の国内小売・通販事業に参入した貿易会社の事例です。一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許(輸入酒類)を同時に取得し、その後の条件緩和手続きを通じて取り扱い品目を段階的に拡大しています。
| 時期 | 取り扱い品目 |
|---|---|
| 2024年12月2日(免許取得時) | 輸入酒類(全品目) |
| 2025年6月2日申請・6月19日免許(審査期間:約17日) | 国産の果実酒、甘味果実酒、ウイスキー、スピリッツ、リキュールを追加 |
| 2026年1月26日申請・2月10日免許(審査期間:約15日) | ビール、発泡酒を追加 |
条件緩和の審査期間は、新規免許の申請(標準約2か月)と比べて短いケースが多く、本事例ではいずれも申請から約2週間程度での交付となりました。ただし審査期間は管轄税務署によって異なります。
バーチャルオフィスを本社とする法人が酒類販売業免許を取得する場合、販売場となる実態のある事務所を別途確保することが必要です。また、事業環境が大きく変化している状況での申請であっても、事業計画と財務内容を丁寧に整理することで対応できるケースがあります。
当事務所では、販売場の要件確認から税務署との事前相談、書類作成・申請まで一括してサポートしております。福岡に限らず、全国の酒類販売業免許申請についてもお気軽にご相談ください。
よくある質問
- Q. 一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許は同時に申請できますか?
- はい、同時に申請でき、要件を満たしていれば免許も同時に交付されます。ただし、一方の免許で要件を満たせなかったり、必要書類が準備できなかったりした場合は、要件を満たした免許のみが交付されることがあります。
- Q. 通信販売酒類小売業免許で輸入酒類を販売する場合、品目の制限はありますか?
- 輸入酒類については、国産酒類に課される「課税移出数量3,000キロリットル未満」の要件が適用されません。そのため、輸入した酒類であれば品目を問わず通信販売の対象となります。ただし、免許証に記載された条件(品目)の範囲内で販売することが前提です。取り扱い品目を追加する場合は、条件緩和の申請が必要です。
- Q. 本社がバーチャルオフィスですが、酒類販売業免許を取得できますか?
- バーチャルオフィスそのものを販売場として申請することはできません。酒類販売業免許は、実際に酒類の販売業務を行う実態のある場所に対して付与されるためです。別途、実態のある事務所や店舗を販売場として確保した上で申請することで、免許取得が可能になります。
- Q. 条件緩和とは何ですか?どのような手続きが必要ですか?
- 通信販売酒類小売業免許では、取り扱える酒類の品目が免許証の条件として記載されます。当初の条件に含まれていない品目を新たに販売したい場合、管轄税務署に条件緩和申請を行うことで品目を追加できます。事業の拡大ペースに合わせて、必要な品目から順に追加していくことが可能です。
- Q. 申請してから免許が下りるまで、どのくらいかかりますか?
- 標準的な審査期間は申請受付から約2か月です。本事例では10月23日申請・12月2日免許と、約40日での取得となりました。ただし、書類の不備や追加資料の提出が必要になった場合は審査期間が延びることがあります。準備は余裕をもって進めることをお勧めします。










