印刷会社が、自社で企画した日本酒を販売する――。
一見すると本業とはまったく異なる事業ですが、酒造メーカーとのコラボレーションやオリジナル商品の企画をきっかけに、異業種から酒類販売へ参入するケースは珍しくありません。
酒類販売業免許の取得にあたって、必ずしも酒類業界での経験が必要になるわけではありません。これまでの事業経験に加えて、「どこから仕入れるのか」「どのような商品を販売するのか」「誰に、どのような方法で販売するのか」といった事業計画を具体的に説明することが重要になります。
今回ご紹介するのは、東京都墨田区で広告・印刷業を営む会社様が、新潟県の酒造メーカーと共同でオリジナルの純米酒を開発し、自社ECサイトで全国販売するために、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許を取得した事例です。
異業種から酒類販売へ参入する場合のポイントや、オリジナル日本酒をECサイトで販売するために必要となる免許について、実際の申請事例をもとにご紹介します。
1. 事例の概要
今回の依頼者は、東京都墨田区で広告・印刷業を営む会社です。新潟県の酒造メーカーと共同でオリジナルの純米酒を開発し、自社のECサイトを通じて全国のお客様に販売することを計画していました。オリジナルのゆるキャラの運営もしており、キャラクター商品の販売もしておりました。
そこで、販売場での直接販売に必要な「一般酒類小売業免許」と、インターネットで全国へ販売するための「通信販売酒類小売業免許」を同時に申請しました。
酒類販売とは異なる業種からの新規参入でしたが、販売する商品、仕入先となる酒造メーカー、ECサイトを利用した販売方法が具体的に決まっていたため、事業計画を明確に整理したうえで申請を進めることができました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取得した免許 | 一般酒類小売業免許/通信販売酒類小売業免許 |
| 依頼者の業種 | 広告・印刷業(酒類販売は本業ではなく新規事業) |
| 初回相談日 | 2014年1月24日 |
| 申請日 | 2014年2月12日 |
| 追加提出 | 2014年3月12日(通信販売する商品の一覧表) |
| 免許交付日 | 2014年3月25日(当事務所が代理受領) |
| 初回相談から交付まで | 約2ヶ月 |
2. 依頼者の状況:印刷業の会社が酒造メーカーとコラボしてオリジナル日本酒を販売
依頼者は広告・印刷業を本業とする会社です。新潟県の酒造メーカーとコラボレーションしてオリジナルの純米酒を開発し、自社のウェブショップで全国に向けて販売することになりました。本業とはまったく異なる酒類販売事業への参入でしたが、具体的な仕入先(酒造メーカー)と販売チャネル(ECサイト)がすでに確定していたため、申請書類に事業計画を明確に示すことができました。
3. 手続きの経過
最初のご相談から免許取得までの経過は以下のとおりです。
2014年1月24日 初訪問
事業内容と販売計画をヒアリングし、必要な免許区分(一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許)を確認。
2014年2月12日 申請
初訪問後にすぐに書類をご用意いただき、約3週間後に税務署へ申請書を提出
2014年2月17日 定款変更
定款の目的に「酒類の販売」に関する記載がなかったため、目的を変更する臨時株主総会を開催。あわせて変更登記を申請してもらいました。
2014年3月12日 追加書類の提出
税務署の担当者からの依頼で、通信販売する商品の一覧表を追加提出。
2014年3月25日
免許通知書を当事務所が代理で受領。
4. この事例のポイント①:定款の事業目的に「酒類の販売」が入っているか
酒類販売業免許の審査では、申請者が法人の場合、定款の事業目的に酒類の販売等に関する記載があることが要件のひとつになります。今回の依頼者は広告・印刷業の会社であったため、設立時の定款には酒類販売に関する目的が含まれていませんでした。
このため、目的を変更する臨時株主総会を開催し、あわせて法務局への変更登記も行っていただきました。異業種から酒類販売事業に新規参入する場合、定款の目的欄の確認は申請準備の初期段階で必ず行うべき事項です。目的変更には株主総会の開催と登記手続きが必要なため、準備に一定の時間がかかることを見込んでおく必要があります。
本来は、定款の目的変更・登記を完了させてから酒類販売業免許を申請するのが原則的な進め方です。ただし、この事例のように目的変更の手続きと免許申請を並行して進めることで、定款変更の完了を待ってから申請する場合に比べて、トータルでの免許取得までの期間を短縮できるケースがあります。定款変更の完了時期の見込みが立っている場合は、申請のタイミングについてもあわせてご相談いただくとよいでしょう。
5. この事例のポイント②:異業種からの参入でも具体的な事業計画があれば免許取得できる
酒類販売業免許の申請では、申請者に酒類販売業や飲食業での経験がなくても、他業種での経営・営業・管理経験が評価されます。今回の依頼者は印刷・広告業での事業経験があり、コラボ商品の企画・販売チャネルの構築といったビジネス面での実績を持っていました。
また、「どの酒造メーカーから何を仕入れ、どのチャネルで誰に販売するか」が申請時点で具体的に固まっていたことが、収支計画の説明を裏付けるうえで有効に機能しました。酒類業界未経験の異業種参入であっても、仕入先・販売先・販売方法が明確であれば審査において説得力のある申請ができます。
6. この事例のポイント③:通信販売酒類小売業免許で全国のお客様に販売できる
今回取得した通信販売酒類小売業免許は、ECサイトやカタログ等を通じて全国の消費者に酒類を販売するための免許です。一般酒類小売業免許は販売場(事務所・店舗)の所在地を管轄する地域が中心となりますが、通信販売免許があれば全国どこのお客様にも販売できます。
なお、この事例では申請から約1ヶ月後の3月12日に、通信販売する商品の一覧表を追加で提出しています。通信販売酒類小売業免許では、取り扱う商品(銘柄・製造者等)を具体的に示す資料の提出を求められることがあるため、審査の途中で追加書類の準備が必要になる場合がある点も見込んでおくとよいでしょう。
ECサイトでの日本酒・地酒販売を計画している場合、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許の2種類を同時に取得しておくことで、対面販売とネット販売の両方に対応できる体制を最初から整えることができます。
7. よくある質問
今回のようなケースでよくある質問をまとめました。
Q. 会社の定款に「酒類の販売」という文言がない場合はどうすればよいですか?
目的を追加・変更する株主総会決議と、法務局への変更登記が必要です。この事例のように、申請の準備を進める中で判明するケースもあるため、酒類販売事業への参入を検討する時点で、定款の事業目的を確認しておくことをおすすめします。
Q. 定款変更が終わっていないと、酒類販売業免許の申請はできませんか?
本来は定款変更・登記を完了させてから申請するのが原則ですが、目的変更の手続きと免許申請を並行して進めることで、トータルでの取得期間を短縮できる場合があります。定款変更の見込み時期が立っているかどうかによって進め方が変わりますので、事前にご相談ください。
Q. 初回相談から免許交付までどのくらいかかりますか?
この事例では初回相談(1月24日)から免許交付(3月25日)まで約2ヶ月でした。標準処理期間は申請日から約2ヶ月ですが、定款変更などの準備事項がある場合は、申請前の準備期間も見込んでおく必要があります。
Q. 通信販売酒類小売業免許では、どのような追加書類が求められることがありますか?
この事例では、通信販売する商品(銘柄等)の一覧表の提出を求められました。取り扱う商品が具体的に決まっている場合は、あらかじめ一覧化しておくとスムーズです。
Q. 酒類業界での勤務経験がなくても免許は取得できますか?
取得できます。この事例のように、他業種での経営・事業運営の実績や、仕入先・販売計画が具体的であることが、審査における説明の説得力につながります。
まとめ
- 広告・印刷業という酒類業界とは無関係の業種からでも、具体的な仕入先・販売計画があれば酒類販売業免許を取得できる
- 法人の場合、定款の事業目的に「酒類の販売」等の記載が必要。含まれていない場合は株主総会での目的変更・変更登記が必要になる
- 通信販売酒類小売業免許では、取扱商品の一覧表など、審査の途中で追加書類の提出を求められることがある
- ECサイトでの全国販売には通信販売酒類小売業免許が必要。一般酒類小売業免許と同時取得で対面・ネット両対応の体制が整えられる
異業種からの酒類販売事業参入、酒造メーカーとのコラボ商品のEC販売に必要な免許についてご相談がある方は、お気軽にお問い合わせください。










