自分の農園で育てた葡萄を原料にしたワインであっても、ワイナリーに醸造を委託し、その完成品を仕入れて販売する場合には、酒類販売業免許が必要です。
今回は、山梨県で工務店を営む個人事業主様からご依頼をいただき、父親が経営する葡萄農園で栽培した葡萄を原料にしたワインを、近隣の方へ販売するための一般酒類小売業免許の取得をお手伝いしました。
これまでは自己消費や知人への贈答用として利用していましたが、今後は継続的に有償販売する計画となったため、免許を取得することになりました。
本業とは別に酒類販売を始める場合や、自家栽培した農産物を原料とするお酒を販売する場合の参考となる事例としてご紹介します。
1. 事例の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者所在地 | 山梨県 |
| 依頼者の状況 | 工務店(建築業)を営む個人事業主。父が経営する葡萄農園の手伝いも兼務 |
| 取得免許 | 一般酒類小売業免許 |
| 販売するお酒 | 自家農園の葡萄を原料にワイナリーが醸造したワイン |
| 申請日 | 2017年2月13日 |
| 免許交付日 | 2017年4月27日 |
| 申請から交付まで | 約2.5ヶ月 |
2. ご相談の経緯
依頼者は工務店(建築業)の代表として個人事業を営む傍ら、父が経営する葡萄農園の手伝いもしている方です。農園では葡萄を栽培し、近隣のワイナリーに卸しています。
これまでは、農園で栽培した葡萄を原料に醸造されたワインをワイナリーから購入し、自己消費や知人への贈答として使っていました。今回、このワインを近隣住民に継続的に販売していきたいという計画のもと、免許申請をご依頼いただきました。
3. 本業が別にある・少量販売でも免許は必要
今回の申請者様は、工務店を本業とする個人事業主で、酒類販売を専業としている方ではありませんでした。
酒類販売業免許は、酒類販売を本業としていることが取得要件ではありません。そのため、建築業や農業など別の事業を営みながら、副業・兼業として酒類販売を行うことも可能です。
今回も、本業である工務店を継続しながら、父親が営む葡萄農園に関係するワインを販売する事業として申請しました。
また、販売予定数量はそれほど多くありませんでしたが、継続して有償販売を行う計画であったため、一般酒類小売業免許を取得しています。
ポイントは、「本業が何か」や「販売数量が多いか少ないか」だけではなく、どのような酒類を、どこから仕入れ、誰にどのように販売するのかという具体的な事業計画を整理することです。
4. 仕入れの構造:製造はワイナリー、販売者は申請者
農園で育てた葡萄が原料であっても、醸造(製造)を行うのはワイナリーです。申請者はそのワイナリーから完成品を仕入れて販売する立場になります。酒税法上、この形態は酒類製造免許ではなく酒類販売業免許(一般酒類小売業免許)の対象です。
仕入先のワイナリーとは長年の取引関係があり、取引承諾書の取得もスムーズでした。要件上の問題はなく、申請から免許取得まで順調に進みました。
5. 農家や副業で酒類販売を始める場合の類似ケース
今回のように、本業とは別に酒類販売を始めたり、自ら栽培した農産物を原料とするお酒を販売したりするケースは、ほかにも考えられます。
たとえば、次のようなケースです。
- 葡萄農家が、自ら栽培した葡萄をワイナリーに販売し、そのワイナリーが醸造したワインを仕入れて直売する
- 米農家が、自ら生産した米を酒蔵に提供し、完成した日本酒を仕入れて販売する
- 本業とは別に、知り合いの酒蔵やワイナリーの商品を仕入れて小規模に販売する
- これまで贈答用として購入していた酒類を、顧客や地域の方からの要望を受けて商品として販売する
このような場合には、原料を自ら生産しているかどうかではなく、「完成した酒類を誰が製造し、誰が仕入れて販売するのか」を整理することが重要です。
今回の事例のように、酒類の製造はワイナリーが行い、申請者が完成品を仕入れて一般消費者に販売する場合には、一般酒類小売業免許を検討することになります。
6. よくある質問
Q. 年に数本しか販売しない予定でも免許は必要ですか?
販売数量が少ないことだけを理由に、免許が不要になるわけではありません。継続して対価を受け取り酒類を販売する場合には、販売方法に応じた酒類販売業免許が必要となります。
Q. 自分の畑で育てた葡萄から作ったワインでも免許は必要ですか?
今回のように、葡萄の栽培者とワインの製造者が別で、ワイナリーが製造した完成品を仕入れて販売する場合には、酒類販売業免許が必要です。
一方、自ら酒類を製造する場合には酒類製造免許の問題が生じるため、同じ「自分の葡萄を使ったワイン」でも事業の仕組みによって必要な免許が異なります。
Q. 知人に無料で配っていたワインを、今後販売する場合はどうなりますか?
無償で贈答するだけであれば通常は酒類の販売には当たりませんが、今後、対価を受け取って継続的に販売する場合には、販売を開始する前に酒類販売業免許を取得する必要があります。
まとめ
- 本業が別の事業(建築業等)であっても、酒類販売業免許は取得できる
- 年に数本の少量販売でも、継続販売の意思があれば免許が必要
- 自分の農産物を原料とした酒でも、醸造をワイナリーに委ねて仕入れる形であれば酒類販売業免許(一般酒類小売業免許)で対応できる
- 長年の取引先から仕入れる場合、取引承諾書の取得がスムーズで申請が進めやすい
副業・兼業での酒類販売、農家・生産者としてのワイン販売免許取得についてご相談がある方は、お気軽にお問い合わせください。全国対応しております。










