海外からクラフトビールを輸入し、日本国内で販売する場合には、販売先や販売方法に応じて必要となる酒類販売業免許が異なります。
今回は、神奈川県横須賀市の事業者様からご依頼をいただき、海外から輸入したクラフトビールを国内で販売するため、複数の酒類販売業免許の取得をお手伝いしました。
一般消費者への店頭販売や飲食店への販売には一般酒類小売業免許、インターネットで一般消費者へ販売する場合には通信販売酒類小売業免許、酒販店などへ卸売する場合には輸入酒類卸売業免許が必要となります。
クラフトビールの輸入販売では、「輸入した酒類を誰に販売するのか」を整理したうえで、販売先に応じた免許を組み合わせることが重要です。
輸入クラフトビールを店頭販売・通信販売・卸売へ展開した事例として、申請の概要とポイントをご紹介します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者所在地 | 神奈川県横須賀市 |
| 依頼者の状況 | 新設法人(役員3名は海外での起業経験あり、日本での会社設立・免許取得は初めて) |
| 取得免許 | 一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許・輸入酒類卸売業免許 |
| 販売する酒類 | タイ産クラフトビール |
| 申請日 | 2022年7月11日 |
| 免許交付日 | 2022年10月4日 |
| 申請から交付まで | 約3ヶ月 |
2. ご相談の経緯
役員3名は海外での起業経験を持つ方々でしたが、日本での会社設立・酒類販売業免許の取得はいずれも初めてでした。会社設立と同時に免許申請を行った、いわゆる新設法人による申請です。
3. なぜ3種類の免許が必要だったのか
今回の事業では、輸入したクラフトビールを「酒販店への卸売」「飲食店や一般消費者への販売」「インターネットでの販売」という複数の方法で展開する予定でした。
そのため、販売先と販売方法に応じて、3種類の酒類販売業免許を同時に申請しました。
輸入酒類卸売業免許
タイの醸造所から直接輸入したビールを、国内の酒類販売業者などへ卸売するための免許です。
輸入酒類卸売業免許で卸売できるのは、自己が輸入した酒類に限られます。
なお、飲食店は酒類を仕入れてそのまま再販売するのではなく、店内で飲用に供するため、飲食店への販売は「卸売」ではありません。そのため、飲食店へ酒類を販売する場合には、輸入酒類卸売業免許ではなく一般酒類小売業免許が必要となります。
一般酒類小売業免許
輸入したクラフトビールを、一般消費者への店頭販売や対面販売のほか、飲食店へ販売するために必要となる免許です。
今回のように、輸入したビールを飲食店にも直接販売する事業モデルでは、輸入酒類卸売業免許だけでは対応できないため、一般酒類小売業免許も取得しました。
通信販売酒類小売業免許
インターネットなどを利用して、広い地域の一般消費者に酒類を販売するための免許です。
今回の事業では、店頭や飲食店への販売だけでなく、オンラインでの販売も予定していたため、通信販売酒類小売業免許もあわせて取得しました。
このように、同じ輸入クラフトビールを販売する場合でも、「誰に」「どのような方法で」販売するのかによって必要となる免許が異なります。
4. 審査で特に時間がかかったポイント:収支計画
申請から免許交付まで約3ヶ月を要した主な要因は、収支計画(事業計画書)の審査でした。
新設法人の場合、既存の事業実績がないため、税務署は収支見込みの根拠を詳しく確認します。特に以下の点について、具体的な根拠資料や説明が求められます。
- 仕入れ予定先(タイの醸造所)との取引承諾書・契約書
- 販売予定先(卸売先・小売先)の具体的な見込み
- 売上・仕入れ・経費の数値の根拠
- 役員の生計を維持できる財務基盤があること
海外取引が絡む場合、取引承諾書が英語等の外国語で作成されているケースも多く、内容の確認に時間がかかることがあります。当事務所では、書類の準備段階から税務署への説明方法まで含めてサポートしました。
5. 新設法人が酒販免許を取得する際の注意点
新設法人は設立直後のため、決算実績がありません。そのため、役員個人の経歴・職歴が重要な審査項目になります。今回のお客様は海外での起業・経営経験があり、この点が審査においてプラスに働きました。
また、輸入酒類卸売業免許の申請では、外国の製造者・輸出者との間で具体的な取引関係があることを示す書類が求められます。事業開始前の段階から取引先候補と交渉を進め、取引承諾書を取得しておくことが申請準備の重要なステップです。
6. よくある質問
Q. 取引承諾書が外国語で作成されている場合、翻訳は必要ですか?
税務署への提出にあたり、日本語訳を添付することが一般的です。本事例のように、外国語書類の内容確認に時間がかかることがあるため、早めに準備しておくとスムーズです。
Q. 日本での起業・酒類業界の経験が全くない役員だけでも申請できますか?
申請できます。本事例のように、海外での起業・経営経験が、酒類販売業を適正に経営できる能力の根拠として評価されることがあります。決算実績がない新設法人では、役員個人の経歴が特に重要な審査項目になります。
Q. 新設法人の場合、収支計画はどの程度詳しく求められますか?
仕入先との取引承諾書、販売先の見込み、売上・仕入れ・経費の数値根拠など、具体的な資料が求められます。決算実績がない分、事業計画の具体性で実現可能性を示すことが重要です。
Q. 海外の醸造所と直接取引する場合、輸入酒類卸売業免許だけで足りますか?
販売先や販売方法によって異なります。
自己が輸入した酒類を国内の酒類販売業者などへ卸売するだけであれば、輸入酒類卸売業免許が中心となります。
一方、飲食店や一般消費者へ直接販売する場合には一般酒類小売業免許、インターネットで一般消費者へ販売する場合には通信販売酒類小売業免許が必要になります。
そのため、今回の事例のように、酒販店への卸売、飲食店への販売、一般消費者への店頭販売・通信販売まで幅広く行う場合には、それぞれの販売方法に対応した免許を組み合わせて取得する必要があります。
まとめ
- 新設法人でも、適切な準備と書類が整っていれば酒販免許の取得は可能
- 輸入・卸売・小売を組み合わせた事業モデルでは複数免許の同時申請が効率的
- 収支計画の審査は新設法人ほど詳細に行われるため、根拠資料の準備が重要
- 海外取引先との書類(取引承諾書等)は早めに準備しておくことが審査をスムーズにする
クラフトビールや輸入酒類の販売事業をお考えの方、新設法人での免許取得をご検討の方は、お気軽にご相談ください。










