【事例】水産・農産加工品メーカーによる輸出酒類卸売業免許の取得と飲食店内での一般酒類小売業免許の追加取得―北海道札幌市
概要
北海道札幌市で水産・農産加工品の製造およびOEM開発を手がける会社が、台湾企業からの引き合いを機に日本酒や北海道ワインの輸出を始めるため、輸出酒類卸売業免許を取得した事例です。相談の時点では経営基礎要件(決算要件)を満たしていないと依頼者自身が懸念していましたが、決算書を確認した結果、申請可能な状態であることが判明し、手続きを進めました。その後、札幌市内に開業した飲食店で酒類の店頭小売を行うため、一般酒類小売業免許も追加取得しています。
依頼者の状況
依頼者は北海道産の良質な原料を使用した水産・農産加工品の製造を主業とし、OEM開発やブランディングにも力を入れている会社です。販売先は国内の量販店・百貨店・ECに加え、近年では輸出事業を拡大しており、直接・間接取引を合わせて世界12か国と継続的に取引を行っています。
こうした事業展開の中で、台湾企業数社から日本酒や北海道ワインを取り扱いたいという申し入れがあり、酒類の輸出を新たな事業として始めることを検討されました。酒類を外国に向けて卸売販売するには輸出酒類卸売業免許が必要なことから、当事務所にご相談いただきました。
申請・取得の経緯
| 初回相談 | 2022年3月16日 |
|---|---|
| ご依頼 | 2022年4月22日 |
| 申請(輸出酒類卸売業免許) | 2022年6月14日 |
| 免許取得(輸出酒類卸売業免許) | 2022年8月4日 |
| 申請(一般酒類小売業免許) | 2023年2月17日 |
| 免許取得(一般酒類小売業免許) | 2023年4月28日 |
ポイント
① 決算要件を自己判断で諦めていたが、確認により申請可能と判明
初回相談の時点で、依頼者は「決算の要件を満たしていないので申請できないかもしれない」という認識をお持ちでした。酒類販売業免許の経営基礎要件では、申請者の財務状況として直近の決算が債務超過でないことや、繰越損失が資本の一定割合を超えていないことなどが求められます。
そこで実際に決算書を確認したところ、3期前は赤字の決算期があったものの、直近の決算では黒字となっており、債務超過の状態ではありませんでした。経営基礎要件の財務審査は直近の決算内容が中心となりますので、過去に赤字期があっても直近が健全であれば申請は可能です。決算書の内容を正確に読み解いた結果、問題なく申請できると判断し、手続きをお引き受けしました。
このように、「自分は要件を満たしていないだろう」と思い込んで諦めてしまうケースは少なくありません。実際に決算書を確認してみると申請可能なケースも多いため、まずは専門家への相談をお勧めします。
② 輸出酒類卸売業免許の概要と対象となる酒類
輸出酒類卸売業免許は、外国に向けて酒類を卸売販売するための免許です。品目の制限はなく、日本酒・ワイン・ビール・焼酎・ウイスキーなど、すべての酒類を輸出対象とすることができます。今回は台湾企業からの引き合いを受けて日本酒と北海道ワインの輸出を想定していましたが、免許上は全酒類を輸出できる免許として取得しました。将来的に扱う品目が増えた場合にも対応できるよう、対象品目を限定せずに申請するのが一般的です。
なお、輸出酒類卸売業免許では、輸出先の国・地域の酒類に関する法規制への対応は申請者自身が確認する必要があります。免許はあくまでも日本国内における酒類の卸売販売行為を認めるものです。
③ 翌年に飲食店を開業し、一般酒類小売業免許を追加取得
輸出酒類卸売業免許の取得後、依頼者は2023年に札幌市内で飲食店を開業しました。その店舗内に物販エリアを設け、日本酒や北海道ワインなどを店頭で小売販売したいというご意向から、一般酒類小売業免許を追加取得することになりました。
審査の過程では、管轄税務署から物販エリアの状況について確認がありました。一般酒類小売業免許の申請では、販売場の区画が明確に設定されていることが求められます。今回は図面を提出することで対応し、税務署による現地調査は行われませんでした。申請から約2か月後の2023年4月28日に免許が付与されました。
また、輸出酒類卸売業免許の申請時にすでに当事務所をご利用いただいていたため、一般酒類小売業免許の申請においても初回申請時に作成・提出した書類のうち内容に変更のないものを流用することができました。2度目以降のご依頼では書類準備の負担が軽減され、スムーズに申請を進めることができます。これは免許の追加取得に限らず、条件緩和の申請の際にも同様です。
まとめ
本事例は、食品製造・輸出事業を展開する会社が酒類の輸出という新たな事業領域に参入するにあたり、輸出酒類卸売業免許を取得した事例です。相談時点での依頼者の「要件を満たしていない」という懸念も、実際に決算書を確認することで解消されました。財務状況の判断は決算書の読み方次第で結論が変わることがあるため、自己判断で諦める前に専門家に相談することが重要です。
また、事業の拡大に合わせて飲食店での小売免許を追加取得した点も本事例の特徴です。事業の成長に伴って必要な免許の種類は変わっていきます。当事務所では、最初の免許取得から、その後の追加・変更申請まで継続してサポートしております。札幌市に限らず、全国の酒類販売業免許申請についてもお気軽にご相談ください。
よくある質問
- Q. 過去の決算期に赤字があると、酒類販売業免許の申請はできませんか?
- 過去に赤字決算の期があっても、直近の決算が黒字で債務超過の状態でなければ申請は可能です。経営基礎要件における財務審査は主に直近の決算内容をもとに判断されます。「以前赤字だったから無理」と自己判断せず、現在の決算書の内容を専門家に確認してもらうことをお勧めします。
- Q. 輸出酒類卸売業免許では、どのような酒類を輸出できますか?
- 輸出酒類卸売業免許では、日本酒・ワイン・ビール・焼酎・ウイスキーなど品目の制限なくすべての酒類を輸出対象とすることができます。申請時に輸出予定の品目が一部であっても、将来的な拡大を見越して全酒類を対象として申請しておくことが一般的です。
- Q. 輸出酒類卸売業免許があれば、国内で酒類を小売販売することもできますか?
- できません。輸出酒類卸売業免許はあくまで外国向けの卸売販売に限られます。国内での小売販売を行うには別途、一般酒類小売業免許や通信販売酒類小売業免許が必要です。本事例でも、飲食店での店頭小売のために一般酒類小売業免許を別途取得しています。
- Q. 飲食店の店内に物販エリアを設けて酒類を販売する場合、特別な手続きは必要ですか?
- 飲食店の店内での酒類小売販売には一般酒類小売業免許が必要です。申請にあたっては、飲食スペースと物販エリアが図面上で明確に区分されていることを確認されます。今回の事例では図面の提出で対応でき、税務署による現地調査は行われませんでしたが、販売場の状況によっては現地調査が実施されることもあります。
- Q. すでに取得している酒類販売業免許とは別の種類の免許を追加取得することはできますか?
- 可能です。事業の拡大や販売形態の変化に応じて、既存の免許に加えて別種類の免許を追加取得することができます。当事務所では過去にご依頼いただいたお客様の場合、前回申請時の書類を流用できるものがあるため、新規申請と比べてスムーズに手続きを進めることができます。










