「一般酒類小売業免許を持っているので、お酒であればどこにでも販売できる」と考えていませんか?
酒類販売業免許は、販売する酒類だけでなく、「誰に販売するのか」「どのような方法で販売するのか」によって必要となる免許が異なります。そのため、すでに酒類販売業免許を取得している会社であっても、事業内容を拡大したことで、現在の免許では対応できなくなっているケースがあります。
今回ご紹介するのは、東京都墨田区で食品の加工・販売を行っていた会社様の事例です。
この会社様は、すでに一般酒類小売業免許を取得して酒類を販売していましたが、税務署による酒類販売の実態確認をきっかけに、酒類販売業者への卸売りについては現在の免許では対応できないことが判明しました。
そこで当事務所にご相談いただき、既存の一般酒類小売業免許について洋酒卸売業免許への条件緩和を行うとともに、インターネット等で酒類を販売するための通信販売酒類小売業免許も取得しました。
この事例をもとに、一般酒類小売業免許と卸売業免許の違いや、事業内容が変わった場合に酒類販売業免許を見直す際のポイントについてご紹介します。
1. 事例の概要
今回ご相談いただいたのは、東京都墨田区で食品の加工・販売を行っている会社様です。
すでに一般酒類小売業免許を取得していましたが、事業を行う中で、酒類販売業者への卸売りやインターネット等を利用した酒類販売も行うようになっていました。
税務署による実態確認をきっかけに、現在の免許だけではこれらの販売方法に対応できないことが判明したため、既存免許の条件緩和と通信販売酒類小売業免許の取得について当事務所へご相談いただきました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者所在地 | 東京都墨田区 |
| 依頼者の業種 | 食品加工・販売業 |
| 既に取得していた免許 | 一般酒類小売業免許 |
| 今回取得した免許 | 洋酒卸売業免許(条件緩和)/通信販売酒類小売業免許 |
| 主な取扱酒類 | 中国から輸入されたリキュール・蒸留酒等 |
| ご相談のきっかけ | 税務署による酒類販売の実態確認 |
| お問い合わせ日 | 2014年1月14日 |
| 申請日 | 2014年1月31日 |
| 免許交付日 | 2014年3月27日 |
| お問い合わせから交付まで | 約2ヶ月半 |
2. ご相談の経緯:税務署の調査で判明
今回の会社様は、もともと一般酒類小売業免許を取得し、酒類の販売を行っていました。
ところが、管轄税務署の酒類指導官による酒類販売の実態確認が行われた際、一般酒類小売業免許の範囲を超えて、酒類販売業者への卸売りも行っていることが判明しました。
一般酒類小売業免許は、一般消費者や飲食店などに酒類を販売するための免許です。一方、酒類販売業者に対し、その販売用として酒類を販売する場合には、原則として卸売業免許が必要になります。
そのため税務署から、卸売りを継続するのであれば、速やかに卸売業免許を取得するための手続きを行うよう指導を受けたとのことでした。
また、インターネット等を利用した酒類販売も行っていたことから、卸売業免許だけでなく、通信販売酒類小売業免許についてもあわせて免許内容を整理する必要がありました。
そこで、既存の一般酒類小売業免許をどのように変更すれば現在の事業内容に対応できるのかについて、当事務所へご相談いただきました。
3. 手続きの経過
- 2014年1月14日 お問い合わせ
- 2014年1月31日 申請
- 2014年3月6日 税務署からの指示で、申請していた洋酒の取扱品目のうち粉末酒・雑酒を削除(実際には取り扱わない見込みのため)
- 2014年3月12日 税務署からの依頼で、通販サイトの特定商取引法表記・商品一覧の画面を追加提出
- 2014年3月27日 免許交付
このように、申請時点で取り扱う品目を幅広く記載していても、実態と合わない部分は税務署とのやり取りの中で絞り込まれることがあります。実際に取り扱う予定がない品目まで含めて申請すると、審査で確認を求められる場合があるため、事業計画に沿った品目で申請することが望ましいといえます。
4. 一般酒類小売業免許を持っていても「卸売り」はできません
今回の事例で特に注意したいのが、一般酒類小売業免許と酒類卸売業免許の違いです。
すでに酒類販売業免許を取得していれば、販売先を問わず酒類を販売できると思われることがありますが、酒類販売業免許には「小売」と「卸売」の区分があります。
一般酒類小売業免許では、一般消費者のほか、飲食店やホテルなどに、その店舗で提供・消費するための酒類を販売することができます。
一方、酒屋やスーパーなどの酒類販売業者に対して、その酒類をさらに販売する目的で販売する場合は「卸売り」となり、一般酒類小売業免許だけでは対応できません。別途、販売する酒類や取引内容に応じた酒類卸売業免許が必要になります。
例えば、
- 飲食店が店内で提供するワインを販売する → 小売
- 一般消費者が自宅で飲む日本酒を販売する → 小売
- 酒販店が店頭で販売するためのワインを販売する → 卸売
- 酒類販売業免許を持つ事業者が再販売するための商品を販売する → 卸売
という違いがあります。
今回の会社様は、一般酒類小売業免許をすでに取得していましたが、酒類販売業者への販売も行っていたため、実際の取引内容に合わせて卸売業免許を追加する必要がありました。
既存の酒類販売業免許がある場合には、必ずしも新たに一から免許を取得するわけではなく、本件のように、既存免許の販売条件を広げる「条件緩和の申出」によって対応できる場合があります。
5. 今回取得した免許の内容
① 洋酒卸売業免許(条件緩和)
本件企業様は、中国から輸入された洋酒(リキュール・蒸留酒等)を取り扱っておられました。そのため、卸売対象を実際に取り扱う品目に絞ったうえで、既存の小売免許に対する条件緩和申請という形で対応しました。
② 通信販売酒類小売業免許
さらに、インターネットを通じた販売(ECサイト経由、電話・カタログ販売)も行っていたため、これに対応するための通信販売酒類小売業免許も申請しました。近年はEC化が進んでいるため、通信販売免許の取得ニーズは非常に増えています。
6. 免許なく卸売りを行った場合のリスク
免許の範囲を超えた販売は、酒税法違反となる可能性があります。場合によっては、行政指導、免許取消、刑事罰の対象となることもあります。「知らなかった」「少量だから問題ないと思った」という理由は通用しません。
7. よくある誤解
誤解:小売免許があれば何でも売れる → 販売先によって必要な免許区分が変わります。
誤解:卸売は少しだけなら問題ない → 数量にかかわらず、卸売業免許が無ければ販売できません。
誤解:ネット販売は小売だから一般免許でOK → 通信販売酒類小売業免許が別途必要です。
8. 事業拡大時は必ず「免許の見直し」を
今回の企業様のように、食品販売から酒類取扱いを拡大した、海外酒類の輸入を開始した、BtoCからBtoBへ展開した、実店舗販売からEC販売へ拡大した、といった事業の変化がある場合、必ず酒類免許の確認が必要です。免許制度は非常に細かく分類されており、自己判断は危険です。
9. よくある質問
Q. 一般酒類小売業免許を持っていれば、事業者への卸売りも問題ないと思っていました。なぜダメなのでしょうか?
酒税法上、小売業免許は消費者や飲食店への販売を対象とした免許で、事業者(酒類販売業免許を持つ業者等)への卸売りは対象に含まれません。卸売りを行うには、卸売業免許を別途取得する必要があります。
Q. 申請時に取り扱う予定のない品目まで含めて申請してもよいのでしょうか?
本事例のように、実態に合わない品目は税務署とのやり取りの中で削除を求められることがあります。審査をスムーズに進めるためにも、実際に取り扱う予定の品目に絞って申請することをおすすめします。
Q. すでに小売免許を持っている場合、卸売業免許は新規申請と条件緩和のどちらになりますか?
既存の免許がある場合は、多くのケースで「条件緩和」の申出により対応できます。本事例でも、既存の一般酒類小売業免許に対する条件緩和という形で洋酒卸売業免許を取得しています。
Q. 税務署の実態調査は、どのような場合に行われますか?
定期的な確認のほか、本事例のように事業内容と免許内容にずれがある可能性がある場合などに行われることがあります。日頃から免許の範囲と事業の実態が合っているか確認しておくことが、こうした指摘を防ぐことにつながります。
10. 早期対応が事業を守ります
今回のケースでは、税務署の指導後、速やかに申請を行ったことで大きなトラブルに発展することなく無事免許取得となりました。もし放置していれば、より厳しい対応となっていた可能性もあります。
まとめ
- 一般酒類小売業免許だけでは卸売は不可。卸売には別途卸売業免許が必要
- インターネット販売には通信販売酒類小売業免許が必要
- 既存免許がある場合は「条件緩和申請」で対応できる
- 申請品目は実際の事業計画に沿ったものに絞ることが望ましい
- 無免許販売は行政指導・免許取消・刑事罰の対象となりうる重大なリスク
酒類免許の条件緩和や新規取得は、要件確認・販売形態の整理・取扱品目の確認・事業計画の作成・図面作成・税務署対応など、専門的な対応が必要です。岩元事務所では、一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許・洋酒卸売業免許・輸出入関連免許まで全国対応でサポートしております。
事業内容が少しでも変わる場合は、必ず事前にご相談ください。免許の見直しは「問題が起きてから」ではなく、事前確認が最も重要です。
酒類免許の条件緩和や新規取得についてご不明な点がございましたら、どうぞお気軽に岩元事務所までご相談ください。










