目次
酒類販売業免許とは
酒類販売業免許とは、酒税法に基づき酒類を継続的に販売するために必要な免許です。小売免許・卸売免許など複数の区分があり、事業形態によって取得すべき免許が異なります。
現在の免許制度は、長年にわたる規制緩和の積み重ねによって形成されています。制度の経緯を理解することで、なぜ現在の要件が設けられているのか、なぜ免許区分が細かく分かれているのかが見えてきます。
行政書士岩元事務所では、2009年(平成21年)に酒類販売業免許申請のサポートを開始しました。これまでの実務経験をもとに、制度の概要と歴史的な経緯をご説明します。
酒類販売業免許の種類
酒類販売業免許は、販売形態によって「酒類小売業免許」と「酒類卸売業免許」に区分されています。
酒類小売業免許は、一般消費者・飲食店に向けて販売するときの免許です。店頭販売の場合は「一般酒類小売業免許」、ECサイトやカタログ通販などで広域の消費者に販売する場合は「通信販売酒類小売業免許」に分かれます。
酒類卸売業免許は、酒類販売業者・製造者に向けて卸販売するときの免許です。「全酒類卸売業免許」「洋酒卸売業免許」「自己商標卸売業免許」「ビール卸売業免許」などと細かく区分されており、免許を受けるためには詳細な事業計画が必要です。
現在の区分はこのようになっていますが、過去に取得した免許は当時の法律に基づいて交付されているため、現在の区分と一致しない場合があります。
酒類販売業免許制度の歴史
制度の大まかな流れは次のとおりです。
- 1938年(昭和13年):酒類販売業免許制度の開始
- 1988年(昭和63年):酒類販売業免許等取扱要領の全面改正が決まる
- 1989年(平成元年):段階的な規制緩和が開始
- 1989年(平成元年):「一般酒類小売業免許」「通信販売酒類小売業免許」が設定
- 2001年(平成13年):「距離基準」廃止
- 2003年(平成15年):「人口基準」廃止
- 2006年(平成18年):「緊急調整区域」廃止
- 2012年(平成24年):経営基礎要件の年間販売見込数量の緩和
- 2012年(平成24年):酒類卸売業免許に新たな免許区分が設定
- 2017年(平成29年):酒類の品目等の定義の改正、輸出酒類販売場制度の創設
1938年(昭和13年):酒類販売業免許制度の開始
酒類販売の免許制度は1938年(昭和13年)にはじまりました。このタイミングから1989年(平成元年)6月までに交付された免許は「旧酒類小売業免許」と呼ばれます。
免許制度の開始により、所轄税務署長から免許を受けなければ酒類を販売できなくなりました。当時はさまざまな規制が盛り込まれており、新規参入しづらい制度でもありました。酒類販売業免許の歴史は、これらの規制が緩和されていく歴史でもあります。
1988年(昭和63年):酒類販売業免許等取扱要領の全面改正が決まる
制度開始から50年後の1988年(昭和63年)、「臨時行政改革推進審議会」答申を受け、酒類販売業免許等取扱要領が全面改正されることとなります。これが酒類販売業免許制度の規制緩和のはじまりです。
1989年(平成元年):段階的な規制緩和が開始
国税庁は1989年(平成元年)6月に「酒類販売業免許等取扱要領」を改正し、酒類小売にまつわる規制が緩和されました。大型店舗酒類小売業免許が新設されるなど、新規参入しやすい環境が整備されました(なお、大型店舗酒類小売業免許は現在の「一般酒類小売業免許」に統一されています)。
1989年(平成元年):「一般酒類小売業免許」「通信販売酒類小売業免許」が設定
平成元年にはあらたな区分として「一般酒類小売業免許」「通信販売酒類小売業免許」が設定されました。
| 比較項目 | 一般酒類小売業免許 | 通信販売酒類小売業免許 |
|---|---|---|
| 概要 | 店頭販売。他の酒類販売業者には販売できない | 2都道府県以上の広域にわたる消費者に対して、ECサイトやカタログ通販などで販売 |
| 販売品目 | 原則として全品目の酒類 | 輸入酒類/国産酒類(前会計年度の品目ごとの課税移出数量がすべて3,000kL未満の製造者が製造するもの)/地方の特産品が原料の酒類(条件あり) |
「通信販売酒類小売業免許」では、大手メーカーの国産酒類は販売できないことになっています。しかし現実にはECサイトで大手メーカーの酒類が販売されています。これが「旧酒類小売業免許」(いわゆる「ゾンビ酒類免許」)の存在と関係しています。
1938年から1989年6月までに交付された「旧酒類小売業免許」には、現行の一般・通信販売免許のような制限がありません。つまり全品目の酒類を、販売方法を問わず小売できます。場合によっては卸売も含めて全てのお酒の販売が可能な免許の場合もあります。
この古い免許は現在取得できないため「ゾンビ酒類免許」と呼ばれることがあります(2014年6月にビジネス雑誌で広く知られるようになりました。発売前の5月に岩元事務所にも取材に来所されており、情報提供等で協力しています)。
ゾンビ酒類免許があれば大手メーカーの酒類もECで販売できるため、新規参入企業が免許保有業者を企業買収して引き継ぐケースも少なくありません。
【実務上の注意】昭和時代から免許を持っている場合昭和時代に取得した酒類販売業免許は、現在の区分と異なる権限が付与されている場合があります。「一般小売しか持っていない」と認識していても、実は通信販売の制限がない小売や卸売もできる免許である場合があります。
昭和の時代から免許を保有している場合は、一度税務署に確認することをおすすめします。
2001年(平成13年):「距離基準」廃止
それまでは「既存酒販店から一定の距離(50〜150m)には免許しない」とされていましたが、2001年(平成13年)にこの距離基準が撤廃されました。
岩元事務所代表の実家は鹿児島県で「岩元酒店」を営んでおり、2000年頃まで営業していました。幼少期の頃、約100メートル先の商店ではたばこは販売していたものの酒類は販売していませんでした。距離基準があったためです。その後、酒類販売については距離基準が撤廃されましたが、たばこの小売販売については現在も距離制限制度が維持されています。
2003年(平成15年):「人口基準」廃止|事実上の自由化
距離基準廃止後も、地域人口あたりの免許枠を定めた「人口基準」は残っていました。2003年(平成15年)にこの人口基準も廃止されたことで、酒類販売は事実上の自由化を迎えたといわれています。
2006年(平成18年):緊急調整区域の廃止
酒類の過剰供給地域として指定された「緊急調整区域」での新規出店制限も、2006年(平成18年)に廃止されました。これにより、すべての地域での自由化が完成しました。
2012年(平成24年):経営基礎要件の年間販売見込数量の緩和
酒類卸売業免許の取得には「基準数量(年平均販売見込数量)」の要件があります。2012年(平成24年)にこの基準が大幅に緩和されました。
| 免許種別 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 全酒類卸売業免許 | 720L又は270L | 100L |
| ビール卸売業免許 | 360L、240L又は120L | 50L |
| 洋酒卸売業免許 | 36L又は24L | 廃止 |
| 輸出入酒類卸売業免許 | 6L |
これにより小売業だけでなく、卸売業にも参入しやすくなりました。
2012年(平成24年):酒類卸売業免許に新たな免許区分が設定
2012年には酒類卸売業免許に新たな区分が4つ設定されました。
- 店頭販売酒類卸売業免許
- 協同組合員間酒類卸売業免許
- 自己商標酒類卸売業免許
- 特殊酒類卸売業免許
また、2012年から「全酒類卸売業免許」と「ビール卸売業免許」の申請手続きが変更され、毎年9月1日に免許可能件数が公表され、公開抽選により審査順位を決定する方式になりました。
2012年の東京の免許可能件数は8件でしたが、岩元事務所がサポートした会社は8番目の審査順位を引き当て、免許取得となりました。代表者自身が代理人として抽選会に参加しています。
税務署からのお知らせ文書


全酒類卸売業免許抽選実施通知書

2017年(平成29年):酒類の品目等の定義の改正
2017年に酒類の品目等の定義が改正されました。
(1)名称の改正:連続式蒸留しょうちゅうが「連続式蒸留焼酎」に、単式蒸留しょうちゅうが「単式蒸留焼酎」に変更されました。
(2)製造方法による定義の変更
| 旧酒税法 | 新酒税法 | 範囲 |
|---|---|---|
| 発泡酒 | ビール | 麦芽、ホップ、水その他一定の副原料を発酵させたもので、麦芽比率が50%以上かつ使用果実等が麦芽重量の5%を超えないもの(アルコール分20度未満) |
| 甘味果実酒 | 果実酒 | 果実酒にオークチップを浸してその成分を浸出させたもの |
| スピリッツ | ブランデー | 果実酒にオークチップを浸して浸出させた新酒税法上の果実酒を蒸留したもの(留出時のアルコール分が95度未満のもの) |
この改正により、平成30年3月までに発泡酒の製造免許を取得すると新酒税法上のビールの製造もできるため、発泡酒の製造免許申請が増加しました。通販免許の申請でも、発泡酒の製造免許を持っている会社から証明書をもらって申請するとビールの通販ができるようになりましたが、一部の税務署では但し書きにより制限される場合があります。
2021年(令和3年):越境ECの取扱いの実務変更
2021年に税務署への相談を通じて、海外への酒類販売については販売先が個人か業者かを問わず輸出酒類卸売業免許が必要とされる運用に変更になったことが確認されました。海外向け通信販売では販売先が最終消費者か酒類販売業者かを実務上判別することが困難なため、免許区分を明確にする必要があるとの理由です。
法令改正や通達の公表があったわけではありませんが、現在は海外向け販売(越境ECを含む)については輸出酒類卸売業免許の取得が求められる取扱いが定着しています。
現在の酒類販売業免許取得に必要な要件
規制緩和により参入しやすくなった一方で、免許を取得するためには以下の要件を満たす必要があります。
| 人的要件 | 申請者が過去に酒類製造・販売業免許の取消処分を受けていないこと、申請前2年以内に国税・地方税の滞納処分を受けていないこと など |
|---|---|
| 場所的要件 | 申請販売所が酒類の製造場・他の販売場・酒場・旅館・料理店等と同一の場所でないこと など |
| 経営基礎要件 | 経営の基礎が薄弱でないこと、申請者(法人の場合はその役員)が免許を受けている酒類の製造業または販売業の業務に引き続き3年以上直接従事していること など |
| 需給調整要件 | 酒場・旅館・料理店等酒類を取り扱う接客業者でないこと など |
まとめ
酒類販売業免許は、1938年の制度開始から長年の規制緩和を経て、現在は事実上自由化されています。新たに酒類販売を始めたい企業・個人事業主でも、要件を満たせば免許を取得できます。
ただし満たすべき条件は多岐にわたり、事業形態によって取得すべき免許の区分も異なります。どの免許が必要か、要件を満たしているかどうかのご確認から、申請書類の作成・提出まで、行政書士岩元事務所では初回相談無料でお受けしています。お気軽にお問い合わせください。
執筆者の実務経験本記事は、酒類販売業免許の申請を多数取り扱ってきた行政書士の実務経験をもとに整理しています。制度改正前後の申請実務の違いも踏まえています。










